研究課題
test本年度はESR線量推定法の検出限界の改善のための①実験的処理の準備、②測定時の試料配置の影響、③解析のアルゴリズムの検討を行った。①実験的処理の試行実験に実際の試料を使うことはできないため、大体の人工アパタイト試料での検証実験を行った。粉末状ヒドロキシアパタイトおよび顆粒状ヒドロキシアパタイトの成分解析、およびESR線量応答、化学処理工程の耐久性について調べた。その結果、生身の動物の歯に比べて、粉末状アパタイトは成分が、顆粒状アパタイトは線量応答が動物試料の代替として充分であったが、逆は十分ではなかった。また、化学処理工程はどちらの試料も損失が大きく、化学処理の影響評価に使用するには十分な硬さを有していないことが分かった。②ニホンザルの試料を用いたESR測定時における、試料の配置が与える影響は、低感度のESR装置ではその影響はほとんど現れることはなかったが、高感度の装置では一定の影響があることが分かった。また、積算回数の与える影響は、高感度の装置ではヒトで基準値とされている回数より増やしてもほとんどS/N比の改善は見られなかったが、低感度の装置では回数を増やせばS/N比の改善が見込めることが分かった。③測定したESRスペクトルの解析アルゴリズムをこれまで使用していたものを改良した。従来の多成分解析のアルゴリズムで課題であった、微小な寄与しかないはずの成分が解析時に異常に大きくならないアルゴリズムを試験的に制作、使用し、従来のアルゴリズムでは解析できなかったスペクトルが解析できるようになった。また、解析できていたスペクトルも、解析結果の分散が小さくなり、推定線量値のエラーを小さくできる見込みがあることが分かった。
3: やや遅れている
2021年度の計画では、動物の線量推定のためのプロトコル改良を行い、新しいESR装置を用いて検量線の作成を行う予定であった。しかしながら、プロトコル改良のために使用した人工のヒドロキシアパタイトに硬さが生体の歯試料に比べやや劣っていたため、そのままの処理が適用できないことが分かり、化学処理の耐久試験を行っていた。また、成分を分析してみたところ、試験していた二つの人工アパタイト試料で、同じヒドロキシアパタイトでも、含有する炭素量(炭酸イオン、ラジカルの量)が異なっていることが分かったため、線量応答が十分に確認できるか調査を行う必要が出てきたため、想定よりも時間がかかった。また、新しい検量線を作成するには新しいコントロールサンプルをストックから使用することになるが、予定をしていたγ線照射施設が年内に使用できなくなることが判明し、十分な点数のある検量線が作成できる保証ができなかったため、ストックの管理者の許可が下りず、検量線が作成できなかった。また、前述の事前処理に対するが行えなかったので、代替として数値処理に関する改善手法を行っており、事前処理の影響評価は部分的には前進したが、全体としては計画を十分に遂行できなかった。
本年度は、前年度から押している影響評価の続きの分析を行うことと、新しい装置での検量線の作成を行うこととする。化学処理に関しては、人工アパタイトを昨年度行っていた、化学処理の耐久性と同時に、金属成分の数値解析手法の改善研究に関して、その結果一定の解析の安定性向上を達成できたことが共同研究者に評価されたため、今年度の検量線作成用のサンプル作成にめどが立った。5月中に打ち合わせを行い、1-2か月で試料準備、照射と測定を半年ほど行うことで検量線を作成できる見通しである。また、本年度はシミュレーションによる計算実験を行う。シミュレーションの内容は、専用モンテカルロ計算コードを用いたアパタイトの放射線ばく露時の反応シミュレーションと、分子計算パッケージを用いたアパタイト内での炭酸ラジカルの安定構造シミュレーションの二つを行う予定である。こちらは計算実験なので、他の実験の空いた時間を中心に行っていく予定である。
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KEK proceedings
巻: 2021-2 ページ: 91-95