研究課題/領域番号 |
21J23137
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
梶川 俊介 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | YN相互作用 / DAQ |
研究実績の概要 |
本研究では、高統計のラムダ陽子散乱実験を行い、高運動量領域のΛN相互作用の解明を行うことを目的としている。この高統計散乱実験は、J-PARC 高運動量ビームライン(high-pビームライン)の2次粒子ビームモードで実施することが計画されており、それに向けてhigh-pビームライン 2次粒子ビームモードで用いるための実験システムの開発が進められている。 2021年度は、ファイバー検出器の読み出しに使用する回路であるCIRASAME基板用のファームウェア開発を行った。CIRASAME基板は、high-pビームラインの2次粒子ビームモードでの使用のために開発されたMPPC読み出し基板であり、MPPC読み出し用ASICのCITIROC4個を用いた合計128chのMPPC信号の読み出しや、MPPCへのバイアス電源の制御を行うことができる。現在は、CITORC制御用のファームウェアの開発を行っており、CITIROCのパラメータの設定を行えることを確認した段階である。 また、本研究に関連する研究として、アメリカ・フェルミ研究所で行われるEMPHATIC実験への参加を行い、高運動量中間子ビームを用いたハドロン生成反応の測定を行った。EMPHATIC実験で用いたビーム運動量は、high-pビームラインで用いられるビーム運動量と一部重なっているため、EMPHATIC実験で測定したハドロン生成反応のデータを用いて、ラムダ陽子散乱実験のシミュレーションや収量見積もりの改善を行うことができると期待される。これに関しては、一部検出器を用いないPhase-1 setupでの測定を行い、現在データの解析を行っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CIRASAME基板用ファームウェアの開発においては、CIRASAME基板に実装されたCITIROCの制御部分の開発が完了し、テスト信号を用いた動作の確認まで行った。この際、CIRASAME基板のアナログ出力部に用いる回路素子において問題が生じていることが確認されたため、該当部分の修正が予定されている。アナログ出力部は実際のデータ収集時には使用されないため、この問題が今後行われるCIRASAME基板のビーム試験の際は大きな問題にはならないと考えられる。 また、J-PARC high-pビームライングループとコラボレーションを行っている、アメリカ・フェルミ研究所のEMPHATIC実験のPhase-1 runへの参加を行い、高運動量中間子ビームを用いたハドロン生成反応の測定を行った。これらのデータは、ラムダ陽子散乱実験のシミュレーションや収量見積もりの改善に使用することを計画しており、現在現地の実験グループと協力を行いながら解析を進めている。この際、新型コロナウイルスや加速器トラブルの影響により、ビームタイムの短縮並びに一部検出器の不使用といった問題が発生した。これらの問題による影響に関しては、今後の解析の際に評価を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
まずはCIRASAME基板用ファームウェアにMPPCバイアス電源の制御部の実装を行い、実際にMPPCアレイを用いた信号の測定を行える環境を用意する。この環境で信号の確認を行い、ビーム試験に向けてCIRASAME基板の量産を行えることの証明を夏までに行う。 CIRASAME基板のビーム試験に関しては、J-PARC K1.8BRビームラインにおいて、2022年度の後半に行うことが計画されている。本ビーム試験の結果を基に、データ読み出し回路並びにファームウェアのさらなる改良を行っていく。 また、EMPHATIC実験で取得したデータや今後のrunで取得を行うデータに対して、EMPHATIC実験側の実験グループと協力しながら解析を行い、ラムダ陽子散乱実験の計算等へ利用することを計画している。
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