Gα13との共役を増強するG12D変異体を見出すことで、Gα13-DREADDの開発を目指した。最終年度では、正確な構造を予測するために500 nsのGaMDシミュレーションの後にクラスター解析を行った。G12D-Gα12複合体に対するGaMDシミュレーションの結果、複合体構造は高い頻度で2つのクラスターに分布した。一方で、G12D-Gα13複合体では5つのクラスターに分布し、G12D-Gα12複合体と比較して不安定であることが示唆された。さらに、それぞれのクラスターの平均構造を初期構造とし、500 nsのcMDシミュレーションを実施した。シミュレーション中の各複合体のエネルギー状態を計算したところ、G12D-Gα12複合体がより安定な値を示す傾向にあり、このことからも共役の強さが複合体の安定性に起因していることが示唆された。このようにして得られたそれぞれの複合体における最も安定な構造を比較したところ、G12D-Gα12複合体のみで観察される相互作用がいくつか存在していた。Gα12との相互作用が見られたG12Dのアミノ酸を変異させることで、Gα13のアミノ酸を収容するのに適した構造にG12Dを改変可能であると考え、これらのアミノ酸をその他の19種のアミノ酸に変異させた点変異体とGα12、Gα13の共役をスクリーニング的に評価した。その結果、Gα12およびGα13との共役を増強させる変異が複数同定され、さらにこれらの変異の組み合わせによって、最終的にGα12およびGα13と強力に共役可能なGα12/13-DREADDが開発できた。このGα12/13-DREADDとGα12、Gα13の共役の程度は、G12DとGα12の共役の強さと同程度以上であり、G12D同様にin vivoにおいてGα12およびGα13のシグナル機能解析に利用することができると考察される。
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