研究課題/領域番号 |
22J10603
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
秋田 佳祐 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロ燃焼 / 低温酸化反応 / 冷炎 / 火炎伸長 |
研究実績の概要 |
超高圧縮エンジンでは,混合気が高温・高圧条件に達し,冷炎と呼ばれる低温火炎がエンジン内の燃焼に強く影響を及ぼすと考えられる.本年度は,広範囲の温度,圧力,混合気組成条件に対し冷炎及び冷炎強化に伴う火炎伝播速度の促進に関する調査を行なった.東北大学では,微小反応管装置を用いた実験及び数値計算を実施した.実験では,圧力や冷炎化学反応の滞在時間により冷炎の発光強度が強く変動する様子を捉えることに成功,さらに火炎のダイナミクスを解析し冷炎通過時の火炎伝播の促進を明らかにした.また,着火時の大きな圧力変動を解像可能な流体の圧縮性と詳細化学反応を考慮した反応性流体の数値計算ソフトウェア開発し,数値計算を実施した.本数値計算により実験で観察された冷炎による火炎伝播促進効果を定性的に再現した.着火時の化学反応経路の解析では,圧力の上昇に伴い着火時の反応開始経路が中温反応から高温反応に切り替わる圧力条件が存在することを示した.また,国際共同研究として米・テネシー宇宙大学にて実施している数値計算では,冷炎だけでなく火炎伸長を考慮した火炎動態を調査することで,より包括的な冷炎の影響を調査している.実機エンジンに相当する高温条件下で伝播する火炎は,冷炎が存在しない未反応の混合気中を伝播する通常の火炎とは異なり,冷炎の進行度により全く異なる火炎伝播速度の火炎伸長依存性を有した.これは,冷炎の進行により分子の拡散性が大きく変動することが要因であり,従来の火炎伝播速度の火炎伸長理論に反する新たな発見であるといえる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微小反応管を用いた実験では,反応管中を高速伝播する火炎と化学発光が極端に弱い冷炎の干渉現象を捉らえる必要がある.そこで冷炎との干渉現象は直接撮影ではなく,冷炎反応温度域の火炎伝播速度の変動を解析することで,冷炎による火炎伝播促進に関するデータの抽出に成功している.本成果は,燃焼分野で最も権威ある国際学会(International Symposium on Combustion)に採択されただけでなく,国際学術誌Proceedings of the Combustion Instituteに筆頭著者として論文が公開されている.また,実験を厳密に解析するための反応性流体の数値計算ソフトウェアは開発を完了しており,実験結果との定性的に一致することを確認している.米・テネシー宇宙大学での共同研究では,冷炎反応の進行による熱発生だけでなく,冷炎による分子の拡散性の変化を考慮した数値解析を行うことで,従来の火炎伸長を有する火炎伝播理論とは異なる新たな火炎動態を発見した.国際学術誌Combustion and Flameに投稿準備中である.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は大規模数値解析を実施するため,現在の燃焼計算ソフトウェアの高速化を図り,冷炎の熱発生量及び活性なラジカル生成に寄与する化学反応経路を調査し,より定量的かつ体系的に伝播促進の要因を明らかにしていく.また,米・テネシー宇宙大学との共同研究において発見した冷炎反応後の燃焼形態に関して,実機エンジンで想定される温度,圧力条件を含め条件を拡大することで,より普遍的な現象解明を行う.
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