研究課題
日本における交通・輸送分野では、電動化だけでなく、内燃機関のさらなる熱効率向上により、Well-to-Wheelの観点でより低炭素化を実現できる可能性がある。本研究では、特に次世代高圧縮比エンジンの開発に資する、火炎伝播促進による燃焼期間の短縮を利用して、理論熱効率の向上を目指す。従来エンジンにおける層流燃焼速度は、燃料の化学エントロピーと温度・圧力などの熱力学条件によって一意に決定される。一方、高圧縮比化されたエンジンでは冷炎と呼ばれる燃料の部分酸化が顕著になるため、冷炎を使った火炎伝播速度の促進と燃焼期間の短縮が期待できる。最終年度である2023年度は、温度分布制御型マイクロフローリアクタを用いて様々な温度・圧力条件における冷炎の反応強度と火炎伝播速度の相関関係の特定するとともに、冷炎反応の熱力学的影響だけでなく、冷炎反応後の火炎伝播に対する燃料分子の輸送効果についても調査した。前年度・2022年度までに反応性流体用のシミュレーションコードCOGNACを開発し、高速並列化処理により詳細な化学反応と分子輸送の解析を可能にしている。マイクロフローリアクタの圧力依存性の調査では,高圧条件下において冷炎を含む低温及び中温度域の反応が顕著となるとともに、それらがより強い火炎伝播を促進効果を有することを明らかにした。曲率を有する伝播火炎に対する調査では、冷炎反応による燃料分解後の複雑な分子輸送効果を定性的に解明し、特に火炎の初期の成長過程で見られる強い曲率を持つ火炎核に対しては、分子輸送による火炎の促進が顕著であることを示した。この結果は2023年11月に『Combustion and Flame』誌に掲載されている。
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Combustion and Flame
巻: 259 ページ: 113193
10.1016/j.combustflame.2023.113193