本研究では、中国中世の軍事文化に関して、軍はいつから皇帝のものとなったのかということに焦点を当てた。特に、皇帝による親征の事例等の分析を通じて、皇帝の有する軍権に関して調査・考究し、さらに監軍の研究を通じて、皇帝と将帥の関係性について解き明かした。本年度では、昨年度に引き続き、〈皇帝親征〉〈監軍〉の両者について、5世紀までの事例の分析を行った。 まず、昨年度の成果の発表については次の通りである。〈皇帝親征〉に関しては、後漢時代までの皇帝の有する軍権認識について、青木竜一「東漢時代作為“敵国”的軍隊:国制上的一種軍隊模式」(第十四届中国中古史青年学者聯誼会、2023年8月27日)、および青木竜一「後漢・霊帝の軍制改革と将軍自称」(第121回史学会大会、2023年11月12日)と題して口頭発表を行い、前者についてはすでに論文を発表し(『第十四届中国中古史青年学者聯誼会』2023年8月)、後者についてはその口頭発表に基づく論文を現在執筆中である。そして、〈監軍〉に関しては、青木竜一「後漢の監軍――君主と将帥の関係性に注目して――」(第72回東北中国学会大会、2024年5月25日)と題して口頭発表を行うことが決定している。 本年度の研究では、概ね次のような成果を得た。軍はいつから皇帝のものとなったのかという問いに対して、それは魏晋期(3~4世紀)であると結論付けることができる。そうなった背景としては、後漢時代の1世紀後半における軍制改革以降、将軍就任者の出自が大きく変わったことがあり、それに伴い軍事運用が変容していき、漢魏交替の後、魏王朝により制度化が行われ、それを継承した晋王朝によって確立を見るに至った。その詳細についても、今後順次口頭発表および論文発表を行う予定である。
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