研究課題/領域番号 |
22J11549
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
王 吟麗 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
キーワード | 層状カルコゲナイド薄膜 / 圧抵抗効果 / 圧電効果 / IoTデバイス |
研究実績の概要 |
本研究の概要は,近未来“Society 5.0”のIoTデバイス,ロボット用小型センサ,高性能発電装置,ウイルスセンサなどに応用可能なピエゾ薄膜を開発し,各物性およびデバイス性能を解明するものである.スパッタリング成膜を用いて高性能な層状カルコゲナイド系薄膜を創成し,その圧電システム化により電池レスIoTセンサの実現を行う研究である.本年度は,主に以下の実験を行った. ①高配向性を持つCr2Ge2Te6薄膜の作製:現在,一般的なスパッタリング成膜法を用いて,アモルファス状態のカルコゲナイドを結晶化させる事で高結晶配向な層状カルコゲナイドを数十nm~数百nm 厚さまで様々なサイズの試料を正確かつ極めて再現性高く作製することができた.これにより,スパッタリング法で温度・厚さ・積層数などを変化させてCr2Ge2Te6 膜を作製し,特性を評価できる. ②ピエゾ抵抗効果の評価:ウェアラブルセンサに向けるため,フレキシブルな基板でCr2Ge2Te6薄膜を製膜して、ピエゾ抵抗の性能を評価した.また,薄膜の力学特性は基板と非常に異なることを考慮して,実験結果に有限要素解析的検討を加えている.その結果,Cr2Ge2Te6薄膜が非常に優れたピエゾ抵抗効果を持つことを明らかにした. ③メカニズムの解明:今回,現有の半導体薄膜材料と比べて,Cr2Ge2Te6薄膜は数十倍よりも優秀なピエゾ抵抗を現れた.材料内部の変化を明らかするために,ホール測定・ゼーベック測定・XRD・ラマン分光法などを通して,Cr2Ge2Te6薄膜中に優れたピエゾ抵抗効果を発生するメカニズムを解明している.今後,この結果を基づいて,層状カルコゲナイドの設計と改善を行う. 上述した高結晶配向性カルコゲナイド層状薄膜の開発思想と層状カルコゲナイドのデバイス設計について,得られた結果を取りまとめ学会発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在は,薄膜のピエゾ特性評価,メカニズム解明,デバイスの試作について実験を行っている.予想通りにCr2Ge2Te6薄膜が現有の半導体より十倍よりも優秀なピエゾ抵抗効果を持つことを分かった.これにより,スパッタリング法で温度・厚さ・積層数などを変化させてCr2Ge2Te6 膜を作製し,ピエゾ抵抗効果を評価している.得られた結果を基にして,ピエゾ機能性薄膜の作製条件最適化を行った.一方,材料内部の変化を明らかするために,ホール測定・ゼーベック測定・XRD・ラマン分光法などを通して,Cr2Ge2Te6薄膜中に優れたピエゾ抵抗効果を発生するメカニズムを解明している.この結果を基づいて,層状カルコゲナイドの設計と改善を行う予定である.また,ピエゾ触覚センサについてデバイスを試作し,効果を評価した.その結果,層状カルコゲナイド系Cr2Ge2Te6薄膜の圧抵抗効果に基づいて触覚センサは、微小な圧力を検出できることが分かった.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,材料内部の変化を明らかするために,X線吸収微細構造解析(XAFS)法を通して,優秀な圧抵抗効果を発生するメカニズムを解明する.この結果に基づいて,層状カルコゲナイドの設計と改善を行う.引き続き,その圧抵抗効果を利用して微小な圧力を検出できるバイオセンサを試作し、センサ性能を評価する.また,CrTe3およびCr2Ge2Te6を発電デバイスやバイオセンサに応用するため,マルチスケール・マルチフィジックス数値シミュレーションを利用し,電極の材料,大きさ,レイアウトなど様々な影響要因を明らかにする.さらに,マクロ構造とマイクロ・ナノ構造(分域・分極,バンドギャップ等)間の相互作用や電圧・電流-力学場の相互干渉を考慮した数値シミュレーション法を開発・応用し,実験結果に理論的検討を加える.最後は,数値・実験結果を総合的に検討し,データを蓄積して,CrTe3およびCr2Ge2Te6の開発思想と層状カルコゲナイドのデバイス設計指針を提案する.そして,IoT社会に広く応用できる情報検出センサを提案する.
|