研究課題/領域番号 |
22J11948
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
波形 光 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | コロイド結晶 / Yolk-shell / 電場応答性 |
研究実績の概要 |
本研究では、中空のシェルと可動性のコア粒子からなる卵型粒子を用いて規則配列体を作製し、その光学特性を外部からの刺激によって変化させることを目的とする。本年度は、(1) 卵型粒子のコア粒子サイズ及び周囲の電解質濃度が光学特性に及ぼす影響の検討、(2) 粒子配列体の間隙への骨格成分導入による配列構造の安定化について検討した。 (1) について、コア粒子がシェル内部で動くことのできる範囲はコアとシェル内壁間の静電的な相互作用に基づいて決まる。そこで、コアの小粒径化または電解質の添加により静電相互作用を弱めることでコアの可動域を拡大させた。種々の条件に調整した卵型粒子について、コア粒子の運動を共焦点レーザー顕微鏡で観察したところ、コアのサイズが小さいかつ周囲の電解質濃度が高い場合にコアの可動域が拡大することが確かめられた。さらに、それらの規則配列体について電場有/無で光の反射スペクトルを測定すると、コア粒子の可動域が大きいほど無電場時に配列構造が乱雑となり、反射ピーク強度が低下することがわかった。一方ですべての配列体について電場印加時には粒子配列が規則的となり、反射ピーク強度は向上した。以上の検討により、コアサイズおよび周囲の電解質濃度を調節することで卵型粒子配列体の光学特性の制御性が向上することが明らかとなった。 (2) について、現行の手法では卵型粒子は水中で規則構造を形成しており、振動等の刺激によりその構造が崩壊し得ることが確認されている。そこで骨格となる成分を卵型粒子配列体の間隙に充填し、配列構造を補強する手法について検討を行った。令和4年度は主に骨格成分としてシリカを検討してきたが、次年度はアクリル系の有機ポリマーを用いる手法についても検討する。これにより、骨格由来の光散乱の低減や、熱、振動や引張といった新たな外部刺激による光学特性制御能の獲得を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主目標としてきた、電場印加時/無電場時での光反射強度制御について、卵型粒子配列体におけるコア粒子サイズや添加する電解質濃度といったパラメータを種々に変更することで達成できたため。またその際の光反射強度比について、理論的な傾向と一致することを実験的アプローチおよび数値解析の両者から確かめることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、令和4年度の後期から検討を始めた粒子配列構造の堅牢化について継続して検討を進め、光学特性およびその他物性について調査する。特に粒子配列構造を安定化させるために、アクリル系のポリマーからなる骨格成分を粒子間隙に導入することを目指す。透明性の高い同材料からなる骨格成分であれば卵型粒子配列体から得られる光学シグナルを減衰させないことが期待できるほか、適切なモノマー種・架橋剤を選択することで、骨格成分の剛直性も調節可能であると考えられる。比較的柔らかいポリマー骨格を導入することで、熱や振動等の外部刺激により配列構造を可逆的に制御し、より優れた光学特性スイッチング能を有する粒子配列体を実現可能であると期待される。作製した配列体については分光計による光学特性評価の他、共焦点顕微鏡を用いた配列体内部での粒子挙動の評価を行う。
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