がん微小環境において放射線療法や化学療法のような外的ストレスや、肥満や慢性炎症のような内的ストレスは、がん細胞と間質細胞の両方に細胞老化を誘導する。体内で老化した細胞は炎症性蛋白質やエクソソームなどの細胞外小胞の分泌が亢進することが知られており、老化細胞が分泌する細胞外小胞が、がんの進展を助長することが明らかとなっている。これまでの結果から、老化細胞由来の細胞外小胞はいくつかの特徴的な糖鎖修飾があり、膵がん細胞や血管内皮細胞に取り込まれやすいことが明らかになった。しかし、その詳細な分子機構は不明である。そこで本研究では、老化細胞由来の細胞外小胞の糖鎖修飾に着目し、それらが優先的に受容細胞に取り込まれる分子機構を解明し、その機能解析を行うことでがんを含めた加齢性疾患の制御の方策を得ることを目指す。若い細胞由来の細胞外小胞と老化細胞由来の細胞外小胞では、どのような糖鎖修飾の違いがあるのかを調べるために、細胞外小胞の表層糖鎖構造を網羅的に解析することが可能であるレクチンアレイを用いて若い細胞と老化細胞の細胞外小胞の糖鎖を解析した結果、その糖鎖プロファイルが著しく変化していることを明らかにした。さらに、これまでに老化細胞由来の細胞外小胞で糖鎖修飾が増加している蛋白質3種類のうち1つが取り込みに重要であることが明らかとなった。この蛋白質のアミノ酸変異体を用いてその蛋白質の重要性を明らかにした。
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