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2022 年度 実績報告書

膜内電界制御と機械学習の融合に基づく人工細胞膜機能評価システムの創出

研究課題

研究課題/領域番号 22J13311
配分区分補助金
研究機関東北大学

研究代表者

佐藤 まどか  東北大学, 医工学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワードイオンチャネル
研究実績の概要

本研究では、膜タンパク質のイオンチャネルを対象とした新規な機能評価システムを、計測技術および解析技術の2つの観点から構築することを目的としている。2022年度は、解析技術の方で大きく進展したので、以下にその概要を述べる。イオンチャネルは、細胞膜におけるイオンの流出入を制御する膜タンパク質である。イオンチャネルが開口した際に生じるイオン流は電流(イオンチャネル電流)として記録することができ、さらにチャネル電流の解析によってイオンチャネルの開閉キネティクスを推定することができる。計測ノイズを含む単一チャネル電流をイオンチャネルの開状態と閉状態に対応する2つの離散的なレベルに分類するプロセスは”idealization”と呼ばれ、イオンチャネルの機能解析に欠かせない。このチャネル電流解析が種々のイオンチャネルの機能理解に役立ってきた一方で、これまでに提案されてきた解析手法は、イオンチャネルの開閉を確率モデルで表すgating schemeやノイズ除去のためのフィルター強度などのパラメータをあらかじめ設定する必要があり、解析精度はそれらのユーザが事前入力するパラメータに大きく依存してしまうという問題を抱えていた。そこで、本年度は事前のユーザ入力なしにidealization可能な適応的解析手法を創出した。擬似的に生成したイオンチャネル電流波形を対象に、上記手法及びidealization法のgold-standardとされる50%-threshold-crossing法を用いて平均開時間を算出して理論値と比較した結果、約80%のモデル電流データにおいて本手法による解析結果が優れていることが明らかとなった。上記の成果については現在peer review journalに投稿中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、心臓の拍動や神経伝達等の生理現象の基本素子となるイオンチャネルタンパク質の機能評価手法を、異なる二つの観点から新たに創出することを目的としている。
第一に、チャネル電流測定のための新たな入力として膜平行電圧印加可能な実験系を構築している。今年度は膜厚に着目した膜平行電圧の作用機構解明のために、チャネル開時間に膜厚依存性のある土壌細菌由来のモデルチャネルGramicidin Aを用いた電流測定を行った。また、イオンチャネルの構造複雑化に伴う高度化が必須であると考え、膜平行電圧源を直流から交流に発展させる目的で共同研究先である山形大学工学部廣瀬研究室に滞在し、周波数を選択できる交流膜平行電圧源を開発した。
第二に、計測ノイズを含む単一チャネル電流をイオンチャネルの開状態と閉状態に対応する2つの離散的なレベルに分類するプロセス(idealization)を開発している。従来手法においてはgating schemeやノイズ除去のためのフィルター強度などの事前のユーザー入力に結果が依存しやすいという問題があったが、開発した解析システムはユーザ入力なしにidealizationが可能である。疑似的に生成したイオンチャネル電流波形を対象に、上記手法及びidealization法のgold-standardとされる50%-threshold-crossing法を用いて平均開時間を算出して理論値と比較した結果、約80%のモデル電流データにおいて本手法による解析結果が優れていることが明らかとなった。上記の成果については現在peer review journalに投稿中である。

今後の研究の推進方策

直流膜平行電圧が脂質二分子膜の物性に与える影響を膜厚だけではなく、膜張力の観点から評価する。具体的には膜張力を検出するとされている蛍光分子を用いて膜平行電圧が脂質二分子膜の膜張力に及ぼす影響を評価する。また、印加電圧波形を交流へと発展させ、膜張力の観点から周波数応答性を調査する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] New Aspects of Bilayer Lipid Membranes for the Analysis of Ion Channel Functions2022

    • 著者名/発表者名
      Hironori Kageyama,Teng Ma, Madoka Sato,Maki Komiya,Daisuke Tadaki and Ayumi Hirano-Iwata
    • 雑誌名

      Membranes

      巻: 12 ページ: 1-13

    • DOI

      10.3390/membranes12090863

    • 査読あり
  • [学会発表] Kalman-filterとGaussian-Mixture-Model-clusteringに基づく単一イオンチャネル電流のための適応的自動解析アルゴリズムの開発2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤 まどか 張山 昌論 小宮 麻希 平野 愛弓
    • 学会等名
      CPM若手ミーティング
  • [学会発表] 単一イオンチャネル電流データに対する適応的自動解析システムの開発2023

    • 著者名/発表者名
      佐藤 まどか 張山 昌論 小宮 麻希 平野 愛弓
    • 学会等名
      第70回応物春季学術講演会
  • [学会発表] Development of a novel planar lipid bilayer system that enables application of a lateral voltage as a new input for the functional analysis of ion channels2022

    • 著者名/発表者名
      Madoka Sato, Maki Komiya, Kensaku Kanomata, Teng Ma, Daisuke Tadaki,Fumihiko Hirose, and Ayumi Hirano-Iwata
    • 学会等名
      ACS Fall 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Fabrication of a novel Teflon film that enables the application of the lateral voltage as a new input for the functional analysis of ion channels based on planar lipid bilayers2022

    • 著者名/発表者名
      Madoka Sato, Maki Komiya, Kensaku Kanomata, Teng Ma, Daisuke Tadaki, Fumihiko Hirose, and Ayumi Hirano-Iwata
    • 学会等名
      IVC22
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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