研究課題
低周波の血管運動には、血液灌流を促進する機能があると考えられている。本研究では、脳内の血管運動を人為的に増幅し、脳梗塞後の血液灌流を促進することで、発症後のリハビリを加速させることを目指した。前年度は、蛍光マクロ実体顕微鏡を用いて、全脳的な血流動態を継時的に観察する実験系を確立した。また、特定のパターンの視覚刺激を与えることにより、一定のリズムの血管運動を人為的に誘発することに成功した。さらに、視覚刺激を繰り返すことで、誘発された血管運動の振幅が増大することが判明した。そこで本年度は、最も血管運動が増幅する最適な視覚刺激条件を探索した。探索した視覚刺激条件の範囲内においては、視覚刺激の周波数と同調する血管運動振幅が、他の刺激条件と比べて有意に大きくなるような刺激条件はなく、あらゆる視覚刺激条件下において広く同調することができた。また、驚くべきことに、誘発血管運動は視覚関連皮質上だけでなく、観察可能な脳表面のほぼ全ての領域で検出された。また、眼球運動学習レベルと小脳片葉(眼球運動学習に関連する領域)における血管運動振幅の同調レベルは強く相関しており、記憶や学習といった脳機能に脳血管運動が関与している可能性が示唆された。本研究で明らかとなった視覚刺激による全脳的な脳血管運動の亢進が、記憶や学習などの脳機能に寄与することが示されれば、認知症などに対する非侵襲的な治療法の開発というトランスレーショナル研究への発展が期待される。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
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