研究課題/領域番号 |
22J14027
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
陣場 優貴 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 超高温セラミックス / ボライド / ホウ素 / 放電プラズマ焼結(SPS) / 機械的合金化 / 反応焼結 |
研究実績の概要 |
当該年度は、二ホウ化チタン(TiB2)の低温焼結に用いる助剤作製および焼結条件を探索し、強度特性に及ぼす助剤添加の影響の解明に着手した。助剤作製条件の探索では、Ti-B共晶組成の元素粉末を異なる条件でメカニカルアロイングすることで粒度や不純物量を制御、焼結体密度への影響を調べた。アロイングにはボールミルを用い、混錬を目的とした乾式ミルと粒度調整を目的としたアルコール中での湿式ミルの2段階プロセスとした。乾式ミル時のステアリン酸添加の有無で不純物量を制御し、湿式ミルの時間を変えて粒度を調整した。結果、ステアリン酸を使用した助剤の方が緻密化を促進し、また、微細な助剤ほど緻密化を促進した。後者の傾向は粉末焼結では一般的である一方、前者は不純物量が多い方が緻密化しており、予想に反する結果となった。X線回折で助剤の結晶状態を確認したところ、ステアリン酸添加助剤における結晶性の低下が明らかとなり、ステアリン酸が乾式ミル時の助剤金属の凝着を適性化した可能性が高いことが分かった。そのため、ステアリン酸添加助剤は結晶性が低下したことで融点が低下し、優れた焼結性を示したものと考えられる。焼結条件の探索では、一般的な条件より数百度低い焼結温度1300 °Cでも十分に緻密化可能な最少助剤量の探索を目的とし、助剤添加量の異なるTiB2焼結体の密度を調べた。結果、6 wt.% の助剤添加で相対密度99%以上の高密度な焼結体が得られ、それ以上の添加量では密度の増加は殆ど見られなかった。強度特性に及ぼす助剤添加の影響の解明として今年度は微細構造の詳細な分析を行い、TiB2―助剤間の反応で一ホウ化チタン(TiB)が生じたことを明らかにした。文献調査によりTiBが強度特性を改善している可能性が示唆された。 上記を含めた研究成果は、国内外の学会3件にて発表し、内2件で受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究により、一般的な条件より数百度低い焼結温度1300 °Cでも相対密度99%以上の高密度な焼結体が得られる助剤作製条件および焼結条件を見出すことができた。強度特性に及ぼす助剤添加の影響の解明手法として、実施計画では微小試験による機械特性評価を予定していたが、分子動力学計算と組み合わせることでより詳細な理解が可能であることを着想し、先に計算機による破壊挙動の解明に取り組んでいる。強度発現メカニズムの理解は高温特性の予測にも有効であり、研究目的とも一致していることから、研究は「おおむね順調に進展している」考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、本研究は焼結体の作製条件の探索や助剤添加による微細構造への影響を解明してきた。今後は、強度特性に及ぼす助剤添加の影響を明らかにするため、実験と計算の両輪での研究を計画している。室温曲げ強度測定によりマクロな強度特性を評価し、超微小試験技術により局所領域の強度特性を評価することで、強度発現に直接寄与する領域を明らかにする。並行して分子動力学法による破壊挙動シミュレーションを実施し、実験結果と定性的な比較を行うことで助剤添加TiB2焼結体の強度発現メカニズムの理解を目指す。本計画による成果は、低温焼結法で作製したTiB2の高温強度特性の推測を可能にし、研究目的である優れた低温焼結性と高温強度特性の実現につながることが期待される。
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