研究課題/領域番号 |
22J20080
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
東 料太 東北大学, 環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
キーワード | カーボンニュートラル / ゼロカーボンスチール / CCUS / 溶銑製造 / 炭材内装鉱 / 浸炭 |
研究実績の概要 |
本研究の目的はゼロカーボンスチールを実現する炭素循環製銑プロセスの技術原理を提案し、その実現性を基礎的に検討することである。令和4年度は主に「多孔質鉄を基材とする炭素析出実験」と「析出炭素を用いた炭材内装ヘマタイトコンポジットの還元実験」を実施した。以下にそれぞれ得られた知見を示す。 ・多孔質鉄を基材とする炭素析出実験 繊維状多孔質鉄および還元鉄ペレットをCOガス雰囲気600℃に保持することにより、炭素析出反応を進行させた。繊維状多孔質鉄を基材とする炭素析出反応は、還元鉄ペレットと比べて大きな反応速度を示した。これは気孔率の高い多孔質鉄内部において、ガス拡散抵抗の影響が小さくなるためと考えられる。また、炭素析出反応時間を変化させることで、回収できる析出炭素の状態とその割合が変化した。反応初期の炭素はすべてセメンタイトとして生成し、反応時間が長くなると遊離炭素が生成した。遊離炭素の析出後も繊維状多孔質鉄基材は多孔質構造を有しており、仮に多孔質鉄の開気孔全てが遊離炭素で満たされた場合、鉄重量に対する炭素重量比(炭素析出率)は、およそ5.3と計算された。 ・析出炭素を用いた炭材内装ヘマタイトコンポジットの還元実験 化石燃料由来炭材を用いた炭材内装ヘマタイトコンポジットと比較して、析出炭素を用いて調製したコンポジットの被還元性は高く、COガス利用効率の非常に高い還元挙動を示した。また、1300℃昇温時には溶けた金属鉄がコンポジット表面に染み出す様子が確認された。還元後のコンポジットの断面組織観察から、溶融したセメンタイトが還元鉄に接触することにより浸炭が進行すると考察している。これは化石燃料由来炭材を用いたコンポジットには見られない挙動であるため、析出炭素を内装することにより低温で溶銑を製造できる可能性を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多孔質鉄を基材とする炭素析出実験を行い、析出物の形態や炭素析出速度を評価した。さらに、析出炭素を用いて調製した炭材内装ヘマタイトコンポジットの還元および溶融挙動を調査し、析出炭素が還元鉄の浸炭溶融を促進するだけでなく、酸化鉄の還元速度を向上させる可能性を示した。これらの結果から、提案する炭素循環製銑プロセスの実現に向けて良好な研究成果が得られており、その一部は、すでに国内学会で発表している。当初は炭素析出速度に及ぼす炭化ガス組成の影響を調査する予定であったが、実験方法の確立に時間をかけたため計画より進捗がやや遅れている。一方で、析出炭素を用いた炭材内装鉱の還元および浸炭については挙動の調査に留まる予定が、浸炭機構の考察まで進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度では、これまで得られた研究成果をもとに国際誌に投稿する。また、最大炭素析出率の理論値が、溶銑製造のための浸炭用炭素を回収するために目標とする1.9~3.0を上回っているため、ガス組成や反応温度など炭素析出条件の最適化により、目標炭素量を回収する条件を決定する予定である。そして、炭化鉄の分解挙動の調査やX線CT法による3次元構造解析によって、析出炭素を用いた炭材内装鉱の還元および溶融機構を解明する。これにより、炭素循環製銑プロセスの実現に向けた原料設計の最適化を図る。
|