研究課題/領域番号 |
22KJ0285
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山梨 政人 東北大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | アルカロイド / 全合成 / 二量体 / 酸素酸化 / 鉄フタロシアニン / 化学選択性 / ラジカル環化 |
研究実績の概要 |
本年度は、マバクリン-アクアミリン二量体型インドールアルカロイド類であるプレイオコリン、およびプレイオクラリンの合成研究に取り組んだ。はじめに、これら二量体型天然物に共通して含まれる単量体、プレイオカルパミンの改良合成を検討した。当研究室で確立された合成では、ラジカル環化の際にオレフィンの異性化を伴い、低収率であることに課題を残していた。詳細な検討結果、アレニルハライドを用いたラジカル環化と続くアレンの立体選択的な部分還元を経る段階的な手法により、高収率かつ単一の幾何異性体でE-エチリデン部位を有する環化体の合成に成功し、プレイオカルパミンの改良合成を達成した。次に、ビンコリン誘導体の合成研究に着手した。まず、既知の手法によりビンコリンの有するかご型骨格を構築した。しかし、合成終盤において、多官能基化されたインドリン窒素上の保護基の除去は、化学選択性の問題で困難を極めた。そこで、ビンコリンのインドリン窒素上のメチル基を化学選択的に酸化し、その後加水分解することで脱保護の問題を解決した。一方で、カサフォリン誘導体の合成研究も行なった。昨年度までの課題を解決するために、環形成におけるラジカルの位置を変更した、新たな合成経路を立案した。閉環メタセシスによる四置換オレフィン構築では、高活性なSchrodi-Grubbs触媒を用いた条件でのみ、望みの反応が進行することを見出した。その後、生じたオレフィンを面選択的に還元することで、望みの立体化学を有した四環性インドリンの合成に成功した。しかし、その後の官能基変換は、立体障害の影響から化学選択性や位置選択性に問題が生じ、環化の基質となるアシルテルリドの合成は困難であった。得られた知見をもとに、次年度では、あらかじめ必要な官能基を整備したのちに還元を行うなど、官能基変換の順番を変更し、メタノキノリジジン骨格の構築を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、マバクリン-アクアミリン二量体型インドールアルカロイド類に共通して含まれる単量体、プレイオカルパミンの改良合成、およびアクアミリンアルカロイドであるビンコリン誘導体、カサフォリン誘導体の合成研究を精力的に行った。前者では、アレニルハライドを用いたラジカル環化と続くアレンの立体選択的な部分還元を経る段階的な手法によって、高収率かつ単一の幾何異性体でE-エチリデン部位を有する環化体の合成に成功した。次に、ビンコリン誘導体の合成研究に関しては、既知の手法によりビンコリンの有するかご型骨格を構築した。その後の、多官能基化されたインドリン窒素上の保護基の除去は、化学選択性の問題で困難を極めたが、ビンコリンのインドリン窒素上のメチル基を化学選択的に酸化し、その後加水分解することで脱保護の問題を解決した。一方で、カサフォリン誘導体の合成研究に関しては、立体的に歪んだメタノキノリジジン骨格の構築が課題としてあげられる。今年度は、閉環メタセシスによる四置換オレフィンを構築し、その後、生じたオレフィンを面選択的に還元することで、望みの立体化学を有した四環性インドリンの合成に成功した。次年度以降、得られた知見をもとに、メタノキノリジジン骨格の構築が期待される。以上の研究成果から、現在までに順調に研究が進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、まず、これまでモデル基質で確立した鉄フタロシアニンを用いた酸素酸化を介したカップリング反応を、本年度合成を達成したプレイオカルパミン、およびビンコリン誘導体に付すことで、マバクリン-アクアミリン二量体型インドールアルカロイド、プレイオコリンの世界初の全合成を達成する。この際、単量体天然物は高度に官能基化された複雑な構造を有するため、モデル基質とは異なる反応性を示す可能性が考えられる。望むカップリングが進行しない場合は、再度反応条件の最適化を行う。さらに二量体型インドールアルカロイド類の生物活性評価を視野に入れ、酸化的カップリングに用いる基質として、単量体天然物のエナンチオマー体やジアステレオマー体を、別途合成する。その後、確立したカップリングを適用することで、天然物にとどまらず、非天然化合物の合成も試みる。 一方、プレイオクラリンの合成研究に関しては、本年度に引き続き、単量体天然物であるカサフォリン誘導体の合成研究に取り組む。高度に歪んだかご型のメタノキノリジジン骨格の構築に関しては、本年度得られた知見をもとに、官能基変換の順序を変更することで、望みの環化前駆体を合成し、カサフォリン誘導体の合成を目指す。すなわち、あらかじめ必要な官能基を整備したのちに面選択的な還元を行うことで、アシルテルリドやその等価体をかご型構造の内側に位置させ、その官能基を起点にメタノキノリジジン骨格を構築する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
その他に関して、NMR等の機器使用代が当初予定していたものよりも少なかったため。今年度余った基金に関しては、次年度での物品購入や学会出張の費用に使用する予定である。
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