研究課題/領域番号 |
22KJ0291
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡邊 晶斗 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 液体シンチレータ / 微粒子分散 / ZrO2 / 界面制御 |
研究実績の概要 |
ニュートリノ実験用の新規検出器開発に向けて、高発光量・高濃度金属装荷の両立した金属装荷型液体シンチレータの開発を進めている。 本研究では、96Zrから生じるとされているニュートリノを伴わない二重β崩壊の信号を実効的な感度で検出しうる検出器を開発すべく、Zrを多量に添加した液体シンチレータの創出を試みている。特に、添加手法としてZrO2ナノ粒子の分散を試みており、亜臨界水熱法による表面修飾ZrO2ナノ粒子の合成を行っている。 ナノ粒子の単分散のためには、粒子-液相界面に存在する表面修飾層の精密な制御が重要となる。近年の研究において、修飾層における有機分子の構造化が修飾分子-溶媒分子間の分子間相互作用を弱め、ナノ粒子の分散性を低下させている可能性が指摘されている。そこで本年度までの研究では、炭素鎖の長さが異なる2種類の芳香族カルボン酸分子を用いて表面修飾を行うことで、この構造化を回避し、ナノ粒子分散濃度を向上させることを試みた。3フェニルプロピオン酸および6フェニルヘキサン酸の二つの芳香族カルボン酸を混合し、表面修飾を行うことにより、分散濃度を大幅に向上させることに成功し、現状で2.11 wt%のZrをシンチレータ中に導入することに成功した。また、HPLC分析によって、ナノ粒子表面への2種の分子の吸着が成されたことが認められた。この際、修飾分子の混合はナノ粒子の粒径や表面修飾密度に影響を与えず、分散濃度のみを向上させたことから、本研究の分散濃度の向上が、混合修飾の効果によるものであることが示唆される。 並行して金属塩であるサリチル酸リチウムを用いたLi装荷液体シンチレータの開発も行った。この際、励起状態の無放射失活を極小化しうるような材料系の探索を行うことにより、3970 photons/neutronという高い発光量を示す中性子シンチレータの開発にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、ZrO2に発光機能を付与する予定であった。しかし、発光性ナノ粒子の導入がシンチレータの発光効率の向上に必ずしも寄与しないような挙動も観測されつつあり、当計画の有効性が疑問視されたため、当該実験は行わなかった。しかし、代わりにLi装荷液体シンチレータを対象とした組成最適化の実験に注力することで、高効率発光を示す材料を設計するという目標は達成することができ、また、Zrの添加濃度についても本研究の目標であった2 wt%以上という値を達成することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
合成・洗浄プロセスの検討を行うことで、更なる液体シンチレータの性能向上を目指す。この際、ナノ粒子の量産化を見越せるようなプロセスの開発も視野に入れつつ、研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、本年度計画されていた、ナノ粒子への発光中心の導入実験の中止に伴い生じた未使用額である。 次年度は、当初予定していた流通式合成プロセスの開発に加え、洗浄プロセスの改善や出発物質の検討による合成プロセスの改善も行う。
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