研究課題/領域番号 |
22J20554
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大河原 拓 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | SLAM / クライミングロボット / センサ融合 / 宇宙ロボット / ロボティクス / ロボットビジョン / 触覚フィードバック / 最適化 |
研究実績の概要 |
本年度は、ハンドアイシステムによるマッピングシステムと把持状態判定の結果に応じたフィードバック動作の検証、視覚・触覚融合のSLAMの定式化を行った。 大域的な環境を表せるが蓄積誤差を含むグローバルマップに加えて、局所的な環境を表すが蓄積誤差が微小なローカルマップを独立に構築した。グローバルマップに基づくことで、移動可能領域が広い方向に移動するようなロボットの方向を決定することができた。一方でローカルマップに基づくことで、SLAMの蓄積誤差の影響を受けていない地形凸部(把持対象)の位置を推定することができた。さらに、その地形凸部の位置に基づいてロボットの脚を制御することで、グリッパによる把持の成功確率を上げることができた。 これまで、視覚センサを用いた把持状態判定の手法を提案してきたが、今年度からは判定結果に応じたフィードバックによる二種類の自律的な補正動作を実装した。一点目はグリッパが閉じている状態において、グリッパが把持点を適切に把持していないと判定された場合、グリッパを地形に押し付けて掴み直す動作である。二点目はグリッパが開いている状態において、グリッパが意図せずに引っ掛かっていた場合、その引っ掛かりを解除する動作である。そして、これらの補正動作を脚の制御に適用することで、不適切な把持状態から適切な把持状態へと遷移させることができた。さらに、把持状態判定の補正動作を統合した新しい登はんシーケンスを構築した。 さらに、本研究のメインである視覚と触覚を融合したSLAM理論の定式化を行った。一般的なSLAMでは、視覚のみで誤差関数が構成されるが、そこに触覚の項を合成した新しい誤差関数を定義した。そして、この誤差関数を最小化するようにロボットのポーズと地図の最適化を行う。触覚は地形とロボットを密接につなぐ強力な拘束になると考えており、提案するSLAMにより高精度な地図を構築する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗としては、これまでの脚型クライミングロボットのテストベッドの各脚先に小型RGB-Dカメラを搭載したハンドアイシステムを構築した。そして、このハンドアイシステムを用いたアクティブセンシングによって大域的な地図を効率的に構築することに成功した。また、把持点付近の3次元地形データをピンポイントで取得することで、高精度でグリッパを把持点まで誘導させることができた。さらに、ハンドアイシステムによって把持状態を判定し、不適切な把持状態から適切な把持状態へと遷移させるような補正動作も実現できた。 今年度までは視覚センサのみを使用していたが、現在使用している計算機では、上記の地図構築や把持状態判定などの処理が限界であることが分かった。よって、触覚センサのデータの処理コストや提案する視覚・触覚融合のSLAMの計算コストを考慮すると、より強力な計算機が必要である。さらに、将来的にはテストベッドに多くのセンサを搭載していくため、スケールアップしたロボットが必要であることも分かった。よって、より多くのセンサを搭載できるようなスケールで、なおかつそれらのセンサデータをリアルタイムで処理できる計算機を有する脚型クライミングロボットのテストベッドを新たに開発しているため、若干の遅れが生じてしまっている。しかしながら、今回のような改良はいつか実行される必要があったため、そのタイミングが少し前倒しになっただけと判断している。つまり、3年間のスパンで見た場合、本研究課題を問題なく遂行できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、全ての視覚センサ間で密に制約を与えた誤差関数を定義し、この誤差関数に基づくSLAMを完成させる。そして、提案する誤差関数に基づくSLAMの評価実験までを完了させる予定である。 さらに、来年度には触覚センサが搭載された新しいクライミングロボットの開発を完了させる。そして、上記の全ての視覚センサ間で密に制約を与えた誤差関数に触覚の項を合成した視覚・触覚融合のSLAMの実装を進めていく。
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