花粉は、受粉後、雌しべの先端にある細胞から水が供給されることで膨らみ、花粉管を発芽させる。シロイヌナズナにおいては、この過程は、15~30分程度の時間で完了する。このとき、雌しべから花粉へ能動的に水を送っているが、どのような仕組みによって行われているのかは明らかにされていない。本年度は、昨年度に新たに構築したライブイメージング実験系により、シロイヌナズナの花粉吸水時における乳頭細胞の液胞動態を観察した。具体的には、①花粉への水の供給を阻害する化合物の探索、②ライブイメージングによる花粉への水供給時の細胞動態の観察を行った。①については、細胞骨格や細胞内物質輸送を阻害する化合物を複数試したところ、雌しべに処理した際に花粉への水供給を抑制する化合物を見つけることができた。②については、植物細胞における水の貯蔵庫である液胞に着目し、観察を行った。水の供給前、供給途中を比較すると、液胞形態に違いがみられた。この違いを定量的に比べるため、PIV(Particle Image Velocity)による画像解析を行い、液胞運動の速度を測ったところ、その差は見られなかった。一方で、画像相関係数を比較すると、受粉後の方が相関係数が高く、形態が維持される傾向にあることが分かった。さらに、①で見つけた化合物を処理すると、液胞形態に異常が生じた。 以上のことから、花粉への水の供給には、液胞が供給源として働いていることが分かった。
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