研究課題/領域番号 |
22KJ0303
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
武田 一希 東北大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / プラズマ―液体界面 / 活性酸素・窒素種 / 水酸基ラジカル / 三酸化二窒素 |
研究実績の概要 |
本特別研究員は,複雑なプラズマ―液体界面現象の簡単化を期待するプラズマ―高速液流システムと数値モデルを併用する事で界面の活性酸素(ROS)・窒素種 (RNS) の起源と液中挙動解明を目指している.昨年度ではプラズマ照射された高速水流に対して,短寿命活性窒素種のスカベンジャーであるp-ヒドロキシフェニル酢酸試薬を距離制御注入した.その結果照射直後において亜硝酸前駆体の水流断面平均濃度が約700nMであり,3ms程度の半減期をもつ減衰の実験観測に成功した. 本年度では濃度分布均一かつ室温条件を仮定した0次元の化学反応モデルを使用し,実験減衰を説明する条件探索を試みた.なお,本モデルは33の非平衡反応式と7の平衡反応式を含んでいる.まずは初期条件として[NO]0 = 700 nM、[NO2]0 = 140 nMを与えた計算を試みた.短寿命活性窒素種NxOyの反応系を介し,最終的に700 nMの亜硝酸が生成される過程を計算で解くことに成功した.しかしながら実験による亜硝酸の生成時間推移が計算によるものよりも数倍速いことから,短寿命活性窒素種が液体界面で高濃度局在している可能性を見出した.そこで14倍程度高濃度である[NO]0 = 10000 nM, [NO2]0 = 2000 nMを与えた結果,規格化された亜硝酸の生成時間推移が実験結果と良い一致を示した.以上二つの比較から,短寿命RNS(NxOy)が,プラズマー液体界面で14倍程度高濃度に局在している可能性を示すことに成功した. 更に次年度ではレーザー誘起蛍光法を用いた気相側活性種分布の計測を予定している.本年度はピコ秒パルスレーザーの導入および目的活性種の励起に向けた紫外線光路の構築を完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度および本年度において,液相における極短寿命活性酸素種(OHラジカル)と短寿命活性窒素種(NxOy)の実験検出に成功した.また,前者においては拡散の効果も含めた詳細な液中挙動解析と液相側から見た流入フラックスの評価に成功した.後者においては濃度勾配未考慮であるが高濃度局在を示唆する結果が得られており,今後はOHラジカル同様に拡散や液中生成・消費項等を含めたモデルの改良を行っていく予定である. また,界面活性種の起源に相当する気相側においても光学計測系の準備が概ね完了しており,最終年度では気相側の診断をメインで進め,これまでの結果をすべて含んだ比較議論が可能であると見込んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては活性窒素種(NxOy)の反応セットを含めた反応拡散モデルのアップデートによる詳細な活性種の生成・消費時間発展の計算を行う予定である.また,OHラジカルの際同様に境界条件として短寿命活性窒素種においても流入粒子束から定義されるノイマン条件を採用する.これにより液相側から見た流入フラックスの評価を目指す. さらには液流極近傍のプラズマ領域に対して,レーザー誘起蛍光法によるOHおよびNOラジカルの高時間空間分解計測を行う.液流の径方向に対する密度勾配から,液面へと降り注ぐ各種活性種の粒子束を実験計測する. 最後に本研究の総括として,得られた二つの粒子束比較より,プラズマ―液体界面の活性酸素(ROS)・窒素種 (RNS) の起源を明らかとする.
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