研究課題/領域番号 |
22J22265
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川又 雅広 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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キーワード | スキルミオン / マグノンテクスチャ / 中性子散乱 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的はPx偏極手法による対称性スキルミオンやマグノンテクスチャの初検出である。 令和4年度は、まず候補物質に対し対称性スキルミオンやマグノンテクスチャの存在可能性を確認することが主な目的であった。 (1)対称性スキルミオンの候補物質である希土類金属間化合物の単結晶をテトラアーク炉での引き上げ法により作製した。磁化、電気抵抗、ホール抵抗測定を行ったところ、磁場中での輸送特性の異常を確認した。この異常がスキルミオン相由来かどうかを確認するため、磁場中の中性子回折実験を行う予定である。 (2)マグノンテクスチャの候補物質であるSr2MnSi2O7に対して中性子による単結晶構造解析、非弾性中性子散乱実験を行い、磁気構造と相互作用定数を決定した。これらの結果は近く論文として公表される予定である。さらに、電気分極を測定するため、誘電率・電気分極の測定環境を立ち上げ、スピン誘起の電気分極の観測にも成功した。 今年度は対称性スキルミオンとマグノンテクスチャの存在可能性に対する知見を得ることができた。令和5年度はこれらの研究結果をもとに、中性子散乱手法やマクロ測定を駆使し、対称性スキルミオンやマグノンテクスチャの存在を明らかにしていき、本研究の最終目的であるPx偏極手法による対称性スキルミオンとマグノンテクスチャの観測を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書では、令和4年度は以下の3点を実施予定であった。 (1)モノアーク炉およびブリッジマン炉、テトラアーク炉による対称性スキルミオンやマグノンテクスチャの候補物質の単結晶育成及び新たな候補物質の探索を行う。(2)対称性スキルミオンが生じる温度・磁場領域を明らかにするため、スキルミオンを特徴づける高次の磁気反射を非偏光共鳴X線散乱実験により調べる。(3)マグノンテクスチャ候補物質の相互作用定数を明らかにするため、磁気励起を非偏極中性子散乱実験により調べる。 本年度の実施状況は、 (1)対称性スキルミオンの候補物質である希土類金属間化合物のブリッジマン炉における単結晶育成では、原料の揮発などが原因で、目的の化学量論比を達成するような試料は得られていない。一方、テトラアーク炉での引き上げ法により単結晶の育成に成功した。新規候補物質の探索では、モノアーク炉やボックス炉を使いいくつかの候補物質の多結晶を作製した。(2)スキルミオンを特徴づける高次磁気反射を探索するため、KEK PFやSPring-8のビームラインにおいて共鳴X戦散乱実験を行った。使用したサンプル特有の表面の脆さによりL端における磁気反射を観測することはできなかった。そこで、輸送特性からスキルミオン相の兆候を探る方針に切り替え、ホール効果の測定を行ったところ、秩序相内の4T程度の磁場下においてホール抵抗に異常がみられることを明らかにした。(3)マグノンテクスチャ候補物質であるSr2MnSi2O7に対してJ-PARC AMATERASで行われた中性子非弾性散乱実験の結果を解析し、相互作用定数を見積もった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)ブリッジマン法により、対称性スキルミオンの候補物質である希土類金属間化合物の単結晶の高品質化、大型化を目指す。磁場中中性子回折実験と輸送特性測定からスキルミオン相の存在を明らかにする。本年度中にオーストラリアの中性子実験施設ANSTOにおいて低温高磁場中中性子回折実験を行う予定である。なお、ビームタイムは確保済みである。 (2)マグノンテクスチャの存在を明らかにするため、候補物質であるSr2MnSi2O7に対して偏極中性子散乱実験を行う予定である。現在ビームタイムを申請中である。 (1,2)更なる候補物質(対称性スキルミオン、マグノンテクスチャ)の探索のため、いくつかの物質の多結晶試料を作製し、中性子粉末回折実験を行う。
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