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2022 年度 実績報告書

リン脂質合成輸送阻害剤を用いたオルガネラ間リン脂質輸送機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22J12283
配分区分補助金
研究機関山形大学

研究代表者

椎野 浩也  山形大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2024-03-31
キーワードオルガネラ間リン脂質合成輸送機構 / ホスファチジルエタノールアミン / ホスファチジルコリン
研究実績の概要

真核細胞内に発達したオルガネラが正常に機能するためには,オルガネラ膜の主成分であるリン脂質がそのオルガネラ膜にとって適切な組成で維持されることが必須である。しかし,リン脂質のほとんどは小胞体(ER)膜とミトコンドリア内膜で合成されるため,自身の合成後,異なるオルガネラへ輸送される必要がある。しかしながら,ミトコンドリアで合成されたホスファチジルエタノールアミン(PE)の輸送因子や,細胞中に最も多く存在するホスファチジルコリン(PC)の輸送因子などは未解明のままであり,オルガネラ間リン脂質輸送機構にはまだ不明な点が多い。本研究の目的は,化合物と酵母遺伝学を組み合わせた解析を行い,ミトコンドリア-小胞体間における新規リン脂質輸送因子の同定,もしくはPEメチル化酵素を特異的に阻害した時の細胞への影響を明らかにすることによって,ミトコンドリアを介したリン脂質輸送機構を解明することである。申請者はこれまでに東京大学創薬機構から提供を受けた22万種類以上の化合物から,ミトコンドリア-ER間におけるリン脂質合成輸送を特異的に阻害する化合物のスクリーニングを行い,PCの合成を特異的に阻害する化合物を4つ単離することに成功している。これらの化合物をそれぞれLipiBlock-1, 2, 3, 4と命名した。
今年度は,現在得られているPC合成の阻害剤が,PEの輸送,もしくはPEのメチル化のどちらを阻害するのかを明らかにするために,PEメチル化のステップを阻害するか検討した。その結果,LipiBlock-2, 3, 4存在下において,PEのメチル化が阻害された。この結果から,LipiBlock-2, 3, 4はPEメチル化の阻害剤であることが強く示唆された。一方,LipiBlock-1はPEメチル化のステップを阻害しなかったことから,PE輸送のステップを阻害していると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の目的である,ミトコンドリアを介したリン脂質輸送機構の解明のために,現在得られているPC合成の阻害剤(LipiBlock-1, 2, 3, 4)のキャラクタリゼーションを行なった。具体的には,これらの阻害剤がPEをミトコンドリア側からER側へ輸送するステップを阻害しているのか,もしくはPEメチル化のステップを阻害しているのかを明らかにすることを目指した。PEメチル化酵素は既知の因子であるため,まずはPEメチル化のステップを本研究で得られたPC合成の阻害剤(LipiBlock-1, 2, 3, 4)が阻害するか検討した。具体的には,放射性同位体である3HラベルされたPEメチル化の際の基質となるS-アデノシルメチオニン(SAM)を用いて,PEメチル化のステップをモニターすることによって行なった。その結果,LipiBlock-2, 3, 4存在下において,PEのメチル化が阻害された。この結果から,LipiBlock-2, 3, 4はPEメチル化の阻害剤であることが強く示唆された。一方,LipiBlock-1はPEメチル化のステップを阻害しなかったことから,PE輸送のステップを阻害していると考えられる。今後,LipiBlock-1のターゲット因子を同定することで,未解明のPE輸送因子を明らかにすることが期待される。また,これらのPC合成阻害剤(LipiBlock-1, 2, 3, 4)が出芽酵母だけではなく,ヒト細胞においても阻害効果を検討することで,哺乳類細胞のオルガネラ間リン脂質合成輸送機構解明に応用できると期待される。以上の結果から,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

これまでに,LipiBlock-2, 3, 4がPEメチル化のステップを,LipiBlock-1がPE輸送のステップを阻害することを示唆する結果が得られた。今後は,LipiBlock-1を利用し,LipiBlock-1のターゲット因子を同定し,PE輸送因子を明らかにすることを目指す。具体的には,LipiBlock-1に2種類のアジド基を導入した化合物を作製し,ジアジドプローブ法による薬剤標的タンパク質の探索を行う。単離膜画分にジアジド化LipiBlocl-1を作用させ,紫外線照射することで標的タンパク質と分子プローブのアジド基の間に共有結合を形成させる。次に,残りのアジド基にシュタウディンガーライゲーション反応によってビオチンタグを導入することで,標的タンパク質をストレプトアビジンビーズによって精製し,質量分析により同定する。その後,質量分析の結果をもとに,質量分析でヒットした因子について更なる解析を行い,新規PE脂質輸送因子の同定を目指す。具体的には,放射性同位体でリン脂質をラベルして実験を行うことで,解析を進める。
続いて,出芽酵母を用いた探索によって単離した化合物が,ヒトにおいても同様の阻害効果を示すかを検証する。そのためにまず,出芽酵母の膜画分を用いて確立済みのER-ミトコンドリア間リン脂質輸送反応を測定する試験管内実験系をヒト培養細胞から単離した膜画分を用いて構築する。実験系を構築した後,現在得られている化合物がヒトのリン脂質合成輸送反応を阻害するかを検討する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] リン脂質合成輸送阻害剤を用いたミトコンドリアー小胞体間におけるリン脂質輸送機構の解析2022

    • 著者名/発表者名
      椎野浩也,橋本美智子,細谷孝充,遠藤斗志也,田村康
    • 学会等名
      日本生化学会東北支部第88回例会
  • [学会発表] リン脂質合成輸送阻害剤を用いたミトコンドリア・小胞体間における新規リン脂質輸送因子の探索2022

    • 著者名/発表者名
      椎野浩也,橋本美智子,細谷孝充,遠藤斗志也,田村康
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] ミトコンドリア-小胞体間におけるリン脂質合成輸送阻害剤の単離2022

    • 著者名/発表者名
      椎野浩也,橋本美智子,細谷孝充,遠藤斗志也,田村康
    • 学会等名
      第30回山形分子生物学セミナー

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公開日: 2023-12-25  

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