本研究は、2008年より開始した経済連携協定(Economic Partnership Agreement:以下EPA)で来日するインドネシア人看護師の勤務状況や課題を体系的に把握することを目的としている。具体的には、当事者たちの就労支援のあり方を総勢57名のインドネシア人看護師へのインタビュー調査、146名の日本人看護師のアンケート調査、来日前の看護師候補者38名にアンケート調査を実施した。また、インドネシア人看護師を受入れている病院での参与観察を含め、3つの病院で受入れ体制を比較した。 そして、主にライフストーリー研究により長期的にEPAの受入れの実践に着目する本研究は、インドネシア人看護師の受入れ政策にかかわるインドネシアと日本政府の関係機関からの評価や当事者の視座から、EPAの制度上の問題をより明確にした。この研究を通じて、10数年間におけるEPAの課題や限界を浮き彫りにし、受入れた病院が現場で使える研修や就労モデルを模索し、今後の日本社会における外国人受入れ政策に有益な知見の提供を試みた。EPAの制度で来日するインドネシア人看護師の現状を解明することは、高齢化社会における外国人労働者受け入れの枠組みの構築と、多文化共生が進む現代日本の移民研究を確立することに繋がると考える。 最終年度の活動としては、2年目までの成果を総括し、博士論文を執筆した。研究内容が評価され、第17回スミセイ女性研究者奨励賞を受賞した。当該助成金で博士論文を単著で書籍化する予定である。また、英語で投稿した論文がアジア太平洋カンファレンス2023において、ベストペーパアワード2023を日本人で初めて受賞した。
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