研究課題
Phae1は新規ストレス応答性プロテアーゼである。Phae1の発現を制御するシグナル経路を同定するために、前年度の研究により樹立したレポーターアッセイシステム(Phae1>luc)を用いて低分子化合物の阻害剤スクリーニングを行った。その結果、mTOR(mammalian target of rapamycin)の阻害剤として知られているラパマイシンの処理によって、ストレス誘導性のPhae1の発現および細胞死誘導が抑制されることを見出した。つぎに、神経系特異的にmTORをノックダウンした場合、致死的な高温ストレス後の生存率が、野生型の個体よりも高くなることが分かった。以上の結果から、ストレスによって誘導されるPhae1の発現量はmTOR経路によって制御されている可能性が示唆された。また、転写因子zesteはPhae1の遺伝子発現を制御する転写因子である。本年度は、大腸菌を用いてzesteの組み換えタンパク質を調整した。さらにこの組み換えタンパク質を用いてゲルシフトアッセイを行い、ZesteのDNA結合領域がPhae1のプロモーター領域に結合し、DNA-Zesteタンパク質複合体が形成されることを明らかにした。続いてPhae1のプロモーター領域中のzeste結合モチーフの配列に変異を生じさせた場合、DNAとZesteタンパク質の複合体は形成されなくなった。以上の結果から、ZesteはPhae1プロモーター領域に直接結合することで、ストレス後のPhae1の発現量を制御していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ計画通り、低分子化合物の阻害剤スクリーニングからPhae1の発現を制御する阻害剤の同定に成功し、さらに来年度の解析のために必要な実験材料は本年度内にほぼ揃ったためである。
zesteによるPhae1制御機構の解明を目指す。具体的には、免疫沈降やトランスクリプトーム解析の解析を行う予定である。また、致死ストレスマーカーであるPhae1とこれまでに同定された細胞死マーカーの個体死誘導シグナルにおける経時変化や上下関係を明らかにし、ストレス誘導性の個体死の分子機構を見出すことを最終目標とする。
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FEBS Letter
巻: 597 ページ: 288-297
10.1002/1873-3468.14566