研究課題/領域番号 |
21J00492
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
近藤 衣美 筑波大学, 体育系, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 減量 / コンディション / パフォーマンス / エネルギーバランス / 身体組成 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、間欠的絶食やケトン食を用いた減量が、アスリートのエネルギー代謝、身体組成およびコンディションに及ぼす影響を明らかにすることである。さらに、体重階級制競技選手においてしばしばみられる、試合に向けた減量方法とその後のリカバリーの最適な方法を明らかにする。 2021年度は16名の柔道選手の夏季練習期のエネルギー消費量および水分代謝量を調査した。柔道選手の夏季練習期では平均で1日あたり3840 kcalのエネルギーを消費し、6.0 Lの水分を代謝することが明らかとなった。また、12名の柔道選手の試合に向けた減量方法と運動パフォーマンスとの関連を調査した結果、3週間程度かけてゆっくり減量した場合と1週間程度で急速に減量した場合で、身体組成やパフォーマンスに違いは見られなかった。今後、詳細な食事内容や食事方法の違いについて解析を進める。 2021年度はさらに、2名のトップレスリング選手の試合前調整期における体重調整方法の事例を調査した。減量のない男子レスリング選手では、練習前調整期の消費エネルギーが100~500kcal減少することが観察された。また世界トップクラスの女子レスリング選手の減量時には、1日あたり約860 kcalの摂取エネルギーを減少させて17日間で5 kgの体重を減少させていた実態が明らかとなった。この対象者は、慢性的なエネルギー不足状態であった可能性が考えられたため、今後さらに体重階級制競技の女性選手のデータをさらに収集して、減量方法とコンディションの関連を明らかにする。 体重階級制競技選手の計量後の最適なリカバリー方法を検討する研究では、53時間の急速減量後に7.1g/kg体重の炭水化物を摂取しても、大腿部の筋グリコーゲンは減量前のレベルまで回復しない、すなわち計量後に身体に蓄積されたエネルギー源は普段よりも少なかったことを国際学術誌に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに実験を開始し、これまでに柔道選手を対象に夏季の通常練習期と減量期の測定を完了している。これらに加えて、男性トップレスリング選手の試合前の調整期、女性トップレスリング選手の試合前減量時の栄養素摂取量、身体活動量、生化学指標、握力の測定を終え、男性選手の事例を国内の学会誌へ投稿する準備を進めている。女性選手の事例は英文誌に投稿する準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに取得した食事記録から栄養素摂取量分析を進め、アスリートの減量時の食事摂取方法及びエネルギー・栄養素バランスと身体組成、生化学指標、パフォーマンスとの関連を明らかにする。2021年度は夏季に実験を行ったが、水分代謝量は環境の影響を受けることが報告されているため、環境の異なる冬季にも実験を行う必要性が考えられた。したがって、今後は冬季にも同様の実験を行うとともに、さらに対象者数を増やして減量方法と身体組成変化及びパフォーマンス変化との関連についてデータを強化していく見込みである。2022年度は、身体組成学を専門とするUniversity of LisbonのAnaliza M Silva准教授との共同研究で、アスリートの身体組成を正しく評価する方法と水分代謝を考慮した新たな減量方法を解明する予定である。
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