研究課題/領域番号 |
21J20168
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
向山 海凪 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | タイトジャンクション / MA026 / 経皮吸収促進剤 / Claudin-1 / 環状ペプチド |
研究実績の概要 |
MA026はシュードモナス属細菌から単離された環状ペプチドである。これまでに、MA026がイヌ腎臓上皮細胞MDCK IIでタイトジャンクションを開口することが報告されている。以前の研究より、MA026はタイトジャンクションの重要な構成タンパク質であるClaudin-1のVFDSLL領域へ結合することが示唆されているが、結合様式の詳細や結合後にタイトジャンクション開口を引き起こすメカニズムは不明のままである。 本年度はMA026とClaudin-1の結合部位の検討を目的として以下の研究を実施した。まず、Biacoreを用いた表面プラズモン共鳴(SPR)法によるMA026とClaudin-1のVFDSLLペプチドの相互作用の検討を行い、MA026の作用部位の絞り込みを試みた。しかし、適切な再生条件を見出すことが出来なかったためSPR法による検討は難しいと判断した。代わりに、VFDSLLペプチドとMA026の競合阻害実験を実施した。その結果、MA026の活性に重要なアミノ酸を絞り込むことができ、疎水性相互作用が重要である可能性を見出した。また、in vitroでのMA026結合実験に用いるための変異Claudin-1発現細胞株の取得を行った。当初の計画でタイトジャンクション構造を元来持たない細胞株(ヒト骨肉腫細胞HT1080など)を用いる予定であったが、細胞層透過性試験によるTJ開口活性の検討も可能である点から、イヌ腎臓上皮細胞MDCK IIで発現している5種類のClaudinを全てノックアウトしたqKO細胞株を用いて変異Claudin-1発現細胞株の取得を行い、VFDSLL領域変異体を複数取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Biacoreを用いた表面プラズモン共鳴(SPR)法によるMA026とClaudin-1のVFDSLLペプチドの直接的な相互作用の検討を試みたが、適切な再生条件を見出すことが出来なかったためSPR法による検討は達成できなかった。そこで、代替実験としてVFDSLLペプチドとMA026の競合阻害実験を実施した。その結果、MA026の活性に重要なアミノ酸を絞り込みに成功し、MA026の作用メカニズムには疎水性相互作用が重要である可能性を見出した。 並行して、MDCK IIで発現している5種類のClaudinを全てノックアウトしたタイトジャンクション構造を持たないqKO細胞株を用いて変異Claudin-1発現細胞株の取得を進めた。現在、野生型Claudin-1を発現させた細胞株の他、VFDSLL領域をClaudin-3, 15, 18の配列にそれぞれ変異させたClaudin-1発現細胞株の取得が完了している。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は引き続き、まだ取得が完了していない他の変異Claudin-1発現細胞株の取得を進める。取得が完了した変異Claudin-1発現細胞株については、MA026とClaudin-1のVFDSLLペプチドの詳細な相互作用を検討するために順次、以下の実験を実施する。 (1)物質透過性試験でVFDSLL領域の変異によるMA026のタイトジャンクション開口活性への影響を検討する。(2)取得した変異Claudin-1発現細胞に蛍光プローブ化したMA026を処理し、結合の強度を蛍光顕微鏡やフローサイトメトリーで検討する。今年度実施したVFDSLLペプチドとMA026の競合阻害実験および(1)(2)で得られたMA026とVFDSLLペプチドの結合情報を元に結合モデルを作成し、活性の高いMA026類縁体を設計・合成するとともに、MA026結合親和性に影響する変異Claudin-1発現細胞を作製し、それぞれの相互作用を検討することで結合モデルを検証する。
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