広告ディスプレイの認知向上と音響快適性の両立を図るため、ディスプレイの前を通りかかる人にだけ音をピンポイントで提示しディスプレイの存在を認知させる、立体音響提示サイネージのシステムを提案した。33名の参加者を対象に行った模擬店舗での購買行動実験から、ピンポイント音提示サイネージが通行人の注意を惹きつける効果があること、また音が発生しても購買行動に悪影響がないことが明らかになった。本論文の成果は雑誌論文に掲載された。 また、イベント時の混雑緩和やパンデミック時の物理的距離の確保など、都市環境における人流誘導が必要とされる場面で、迂回を促すための音デザインについても調査を実施した。この音は歩行者に迂回を促す動機付けを行うことや、どの道に迂回を促しているかが分かるような立体音響提示を含めた設計を行ったものである。没入型映像環境において現実の街並みをシミュレーションし、作成した3種類の誘導音を歩道の分岐点にて流し、参加者にルート選択をさせる実験を行った。結果、音による迂回の動機付けが可能であり、音の種類によって動機付けの程度に差があることを明らかにした。本成果は国際会議にて口頭発表を行い、参加者と応用展望について議論を行った。 研究期間全体を通じて、情報音の利用効果と音響快適性のトレードオフを解消する空間デザインについて研究を進めた。提案する追従型ピンポイント立体音響提示システムにより、従来は情報音の活用が難しかった商業施設や都市空間においても音の利用が可能となり、空間デザインの自由度の向上や新たな事業展開の可能性が広がった。
|