本研究では、繁殖が難しい野生由来マウス系統の保存を目的とした核移植(nt)ES細胞に関する研究に取り組んだ。野生由来マウスは、実験用マウスとの系統差から亜種および異種野生由来マウスに分けられる。そこで、亜種および異種野生由来マウスに分けてntES細胞の研究を進めてきた。これまでに、亜種・異種野生由来マウスから(亜種では雌雄、異種では雄のみの)ntES細胞の樹立に成功した。また樹立した細胞ラインの品質評価およびキメラマウスの作出により、ntES細胞が受精卵由来ES細胞と同等の品質を保有しており、雄性細胞ラインにおいては生殖細胞系列へ分化可能であることを明らかにした。 そこで3年目は、①細胞ラインの樹立効率の向上を目的とした異種間核移植における胚発生制御因子の探索、および②雄性細胞ラインを用いた雌性細胞ラインの樹立について研究を進めた。①について、異種間核移植胚のRNAseqデータ解析のため、比較用サンプルの回収と選定を行った。解析に最適なサンプルの回収に想定以上の時間を要し、最終年度にはライブラリー調製まで実施し、データ解析には至らなかった。②について、すでに樹立した雄性亜種野生由来マウス由来ntES細胞ラインを用いて雌性細胞ラインの樹立に取り組んだ。既報の手法により実験を行い、雄性(XY)ラインから複数のXOラインの樹立に成功した。XOラインから雌性(XX)ラインへの樹立には至らなかった。
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