研究課題
従来の睡眠覚醒行動は個飼いにしたマウスのみを評価する。しかし、マウスは本来集団で生活する動物であり長期に個飼いにすると抑鬱・攻撃性亢進など様々な異常を示すこともある。本研究では、群飼いの場合、社会的要因によって睡眠量や睡眠の質が変化するのではないかと仮定し、マウスの社会性が睡眠覚醒行動に及ぼす影響とその神経基盤を明らかにすることを目的とする。従来の睡眠測定で群飼い測定ができなかった理由の一つは、テザーケーブルを用いて脳波筋電を記録することによる技術的な困難にあったからである。この問題を回避するために、研究代表者はテザーケーブルと飼育ケージの両方に様々な工夫を行い、他個体がいる状況下で睡眠を測定することに成功した。現在までの実験データで、覚醒、ノンレム睡眠、レム睡眠の時間、エピソード長、ノンレム睡眠中脳波徐波成分等を指標に検討した結果、同一個体のマウスにおいて、 個飼いと群飼いでマウスの睡眠覚醒行動が異なることを明らかにした。同じ空間にある2つの個体は睡眠時に一緒に寄り添って眠るが、直接接触することで体温が温まり、周囲の温度の変化が原因とも考えられる。また、自分以外の同種の個体が同じ空間にいること(嗅覚的、聴覚的要素)の心理的な安心感も考えられる。様々な可能性が考えられるため、今後、仕切りを用意し、直接接触することが影響を与えているのかを確認する。さらに、これらの実験は全てオスのマウスを用いて、群飼い後個飼いの条件で睡眠を測定したが、群飼いと個飼いの状況の違いが、順序に関係がないことを示す必要があると考えられる。しかし、一度個飼いにしたマウスを群飼いするとオス同士では喧嘩が生じ、実験に用いることが困難である。そこで、メスのマウスを用いて群飼い状態から個飼い状態だけではなく、個飼い状態から群飼い状態への睡眠測定を行い、順序に関係がないことを検討する。
2: おおむね順調に進展している
現在までの実験データで、個飼いと群飼いでマウスの睡眠時間が異なることを明らかにした。同一個体のマウスにおいて、群飼いでは覚醒時間が減少し、それに伴い睡眠時間が増加することが示された。群飼いの場合、睡眠時間が長く、ステージ数も多かったが、その原因は定かではない。同じ空間にある2つの個体は睡眠時に一緒に寄り添って眠るが、直接接触することで体温が温まり、周囲の温度の変化が原因とも考えられる。また、自分以外の同種の個体が同じ空間にいること(嗅覚的、聴覚的要素)の心理的な安心感も考えられる。このような可能性が考えられるため、仕切りを用意し、直接接触することが影響を与えているのかを確認した。その結果、仕切りがある状態では、個飼いと群飼いで睡眠時間、睡眠要求、睡眠ステージ数に違いが無かった。これは、直接接触することが群飼いの睡眠状態に影響しているということを示唆している。
個飼いと群飼いでの睡眠覚醒の違いから、他個体の存在が睡眠覚醒行動に与えるかどうか、影響を与える場合は視覚、触覚、嗅覚、聴覚のどの知覚情報が重要な役割を果たすかを検討した結果、直接接触することが群飼いの睡眠状態に影響しているということを示唆された。全ての実験は、群飼い後個飼いの条件で睡眠を測定したが、群飼いと個飼いの状況の違いが、順序に関係がないことを示す必要があると考えられる。しかし、一度個飼いにしたマウスを群飼いするとオス同士では喧嘩が生じ、実験に用いることが困難である。そこで、メスのマウスを用いて同一個体を群飼いから個飼いに、逆に個飼いから群飼いにして睡眠覚醒を検討し、飼育条件の順序による影響も検討する。睡眠測定は、ビデオ撮影と同時に行い、睡眠覚醒時のマウスの行動も観察する。
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