研究課題/領域番号 |
21J20699
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
森本 健斗 筑波大学, 人間総合科学学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / 順遺伝学法 / Mutagenesis / microRNA / 精子形成 / 生殖隔離 / 胚盤胞補完法 |
研究実績の概要 |
本研究は、精子形成に必須のmiRNA(以後、C1-XmiRs)の特定とその制御メカニズムの解明を目指し、特定の染色体領域だけに二つ以上のIndel変異やStructural Variantsを同時的かつランダムに導入する新規手法を開発している。 C1-XmiRsが存在するゲノム領域にランダムに変異を誘導するため、これまでに各C1-XmiRゲノム領域を標的とするsgRNAを発現する合計17種のドナーベクターを、ランダムな組み合わせで染色体に導入したES細胞を作製した。続けて、このES細胞にCas9ベクターをトランスフェクションし、C1-XmiRsゲノム領域に変異を誘導した単一細胞由来のESクローンをこれまでに87クローン得た。ドナーベクターライブラリーの導入効率および導入されたsgRNAの組合せを確認するために、これら87のESクローンにおいて多検体次世代シークエンス解析を行い、1~16種類(平均4.7種類)のsgRNAベクターが導入されていることが明らかになった。続いて、導入されたsgRNAとCas9によってIndel変異やStructural Variantsを導入できたか確認したところ、25~93%の標的C1-XmiRゲノム領域でIndel変異やStructural Variantsが導入されていることが確認できた。また、これらの変異は導入されたsgRNAの組み合わせから期待される変異と一致していた。以上の結果は、本手法が特定の染色体領域に多種多様な変異を同時的かつランダムに導入したことを明確に示す。 精子形成に必須のC1-XmiRsの特定とその制御メカニズムの解明するため、これらのC1-XmiRsランダム変異をF0世代で迅速に解析できるキメラマウス作出法を確立した。現在、C1-XmiRsランダム変異ESクローンからキメラマウスを発生させ、順次表現型比較解析を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的の一つである新規遺伝学手法の確立が達成された。また、もう一つの目的である精子形成に必須のC1-XmiRsの特定とその制御メカニズムを解明するために、必須遺伝子を大きく絞り込むことができる変異の組み合わせを持つESクローンライブラリーも構築できた。加えて、標的遺伝子の機能を迅速に解析できるキメラマウス作出法も確立できた。 以上から今後の個体解析を実施するために必要なほとんどのリソースと手法が確立されていることから、本研究は順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、精子形成に必須のC1-XmiRsの特定とその制御メカニズムの解明するため、C1-XmiR領域に変異を誘導した87のESクローンライブラリーからキメラマウスへ発生させていく。F0世代で解析するため、生殖細胞形成能を欠失したホスト胚とES細胞との凝集胚を作製することで、生殖細胞がES細胞のみに由来するキメラマウスを作出できる胚盤胞補完法を用いる。胚盤胞補完法にて生殖細胞がC1-XmiRs領域に変異を誘導したESクローンのみに由来するキメラマウスを週1~3系統作出し、解析は15日齢で順次行う。この精巣でHE染色・免疫染色により表現型を評価し、RNA解析により、ES細胞の生殖系列への寄与・欠失したC1-XmiRsを確認する。C1-XmiRsの欠失により精子形成異常が確認された場合、RNA-seqでmRNA発現プロファイルを確認する。各キメラマウスが欠失したC1-XmiRsと表現型の情報との相関性を評価することで、精子形成に関与すると思われるC1-XmiRsの組み合わせを炙り出す。精子形成異常を示したC1-XmiRs欠失キメラマウス間での表現型と遺伝子発現プロファイルを網羅的に比較し、各C1-XmiRsが関与する精子形成イベントを推定する。この系にて表現型・原因遺伝子・メカニズムを網羅的に解析する。ここまでに得られた成果を論文にまとめて発表する。
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