研究課題/領域番号 |
21J20875
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
加納 伸一 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 対称錐計画問題 / 半正定値計画問題 / Chubanov法 / 面削減法 |
研究実績の概要 |
本研究は、1.改良Chubanov法を対称錐計画問題へと拡張、2.提案手法の性能を数値実験により確認、3.他のアルゴリズムと組み合わせて活用、という3つの段階で提案手法の有用性を検討するものである。 当該年度では、提案手法の理論の構築及び実装を行い、上記の1と2の目標を達成した。また数値実験の結果から、提案手法が既存の対称錐計画問題でのChubanov法よりも計算時間の早さや精度において優れていることを確認した。そして、提案手法の性能が優れていた理由についての理論的な解釈を与え、具体的な評価指標を用いて既存手法と比較することで、提案手法の性能の良さを評価した。これらの内容を、2021年7月20日~7月23日にオンラインで開催された”SIAM Conference on Optimization (OP21)”において口頭発表を行い、内容をまとめた論文を査読付き国際学術誌に投稿中である。 また、次年度以降の研究(提案手法と他のアルゴリズムとの組み合わせの検討)に関するサーベイを行った。そして、計算機で解きにくい悪状態の錐線形計画問題を、計算機で解きやすい問題へと等価に変換する面削減法(Facial Reduction Algorithm)との組み合わせに期待できることが分かった。さらに、対称錐の1つである半正定値錐を用いた最適化問題(半正定値計画問題)に対して、その問題が実行可能という条件下での面削減法に関する研究を行った。こちらの研究は、提案手法と面削減法との組み合わせを動機づけるきっかけとなったものであり、2022年3月22日と23日に開催された研究集会「最適化;モデリングとアルゴリズム」にて口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進捗状況をおおむね順調と考える理由は以下の3点である。 1.初年度では、改良Chubanov法の対称錐計画問題への拡張とその実装を目的としており、それらを達成した。加えて、計算機実験の結果だけでなく具体的な指標を用いて提案手法の性能を理論的に評価することができ、それらの内容を国際会議において発表した。査読の報告結果を待っている段階ではあるが、査読付き国際学術誌への投稿作業も進めることができた。 2.次年度以降の研究の方針を明確に立てることができた。具体的には、提案手法と面削減法と呼ばれるアルゴリズムの組み合わせに期待できることを確認した。 3.研究計画には含まれていなかった、実行可能な半正定値計画問題に対する面削減法に関しての研究を行うことができた。この研究では、面削減法を計算機上で実装するにあたっての克服すべき課題について触れており、改良Chubanov法と面削減法の組み合わせを動機づけるきっかけとなるものであった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では、他の手法との組み合わせに関する研究と同時並行で、改良Chubanov法の性能向上に関する研究を行うと記載したが、今後の研究では、提案手法(対称錐計画問題に対する改良Chubanov法)と面削減法(Facial Reduction Algorithm)との組み合わせの検討に専念していくつもりである。理由は、面削減法との組み合わせによって得られる効果を検証する方が、研究成果の影響力も大きく、優先順位が高いと考えたためである。面削減法は数値誤差の影響に弱く、計算機上で完璧に実装することは困難である。特に、数値誤差の影響により問題を適切に変換できないという課題を抱えている。現段階では、数値誤差を生まない範囲での面削減法(面削減法の部分的な適用)が改良Chubanov法を用いて構築可能であることを確認している。なので、5月までで面削減法に関するサーベイを終わらせ、上記以外の提案手法との組み合わせ方を検討する。6月以降は計算機で実装を行い、数値実験によってその効果を検証する。数値実験では、応用で現れるような問題例に対してアルゴリズムを適用することで、提案内容の有用性を実用的な観点から評価する。
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備考 |
Embedding modelによる相対的内点解を用いたSDPに対するFacial Reduction/「最適化:モデリングとアルゴリズム」/2022-3-22
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