研究課題/領域番号 |
21J22555
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮坂 藍 筑波大学, グローバル教育院(HBP/HX), 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 性行動 / マウス / ドパミン / GRABDA / GCaMP / ファイバーフォトメトリー法 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
げっ歯類の性行動は、雄が発情雌に対してにおい嗅ぎ、追跡などの探索行動を十分に行った後、挿入、射精といった完了行動が、順序だって表出されることにより形作られる。しかしながら、これらの様々な行動成分からなる雄の性行動が、どのように脳内で制御されているかは明らかになっていない。本研究では、脳内報酬系の主要なシグナル分子のドパミンの放出パターンを、ドパミン動態を可視化するGRABDAセンサーにより計測し、雄マウスの性行動場面に観察される特徴的なドパミン動態が、どのように性行動制御に寄与するのかを解明することを目指す。 本年度は、雄マウスの性行動場面において、性行動表出に対応するドパミン動態を観察することができる脳部位を発見した。さらに、この性行動場面特有に観察されるドパミン動態が、どのように入力領域に作用するかを明らかにするために、カルシウムインジケーターのGCaMPの蛍光強度変化を計測したところ、この特徴的なドパミン動態に応じて、入力領域の活動が顕著に変化していることが明らかとなった。この脳部位特異的に、光遺伝学的手法を用いて、性行動場面に見られる特殊なドパミン放出を阻害、あるいは入力部位に本来認められる活動を阻害したところ、性行動が阻害されることを発見した。 また、ファイバーフォトメトリー法によるGRABDA計測と、光遺伝学的手法による神経活動の操作を、標的部位で単一の光ファイバーから行う実験環境のセットアップを行った。これに加えて、Ex vivoイメージングを用いた実験により、性行動場面に認められる特徴的なドパミン動態が、その標的脳部位における局所的な神経回路により制御されていることを示唆する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
性行動場面に特徴的に認められるドパミン動態が、行動の表出維持に重要であることを見出した。加えて、この特徴的なドパミン動態が、どのように接続領域に作用するかを明らかにし、この特徴的なドパミン放出に伴う神経活動も、性行動の表出維持に重要であることを示唆する結果を得た。特徴的なドパミン放出が、どのような神経回路により制御されているかを示唆する結果を得ており、これらの結果を基に論文執筆も開始している。したがって、本年度は計画通りに本研究が進展しており、おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、雄マウスの性行動場面において認められる特徴的なドパミン動態の役割と、制御機構に迫る発見をした。 次年度は、本年度発見した性行動制御に重要な脳部位の局所的な神経回路を構成する、具体的な神経集団の特定を行う。さらにこのスクリーニング結果を踏まえて、この性行動表出に重要な脳部位へ投射する上流に位置する脳部位と、下流に位置する神経集団を同定する。このために、改変狂犬病ウイルスベクターと、シナプトフィジンを発現するアデノ随伴ウイルスベクター用いた詳細な神経トレーシングを行う。 これらの結果により、性行動制御に重要なドパミン動態が、どのような脳部位からの信号により生成されるのか、さらにどのような脳部位に作用することで、行動表出に影響するのかを迫ることが可能になる。これらの結果と、前年度の成果とまとめて、国際誌に投稿予定である。
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