研究課題/領域番号 |
21J30004
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高橋 徹 筑波大学, 筑波大学医学医療系分子行動生理学/国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS), 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 冬眠 / 休眠 / QIH / 低体温 / 視床下部 / 神経科学 / 体温制御 / 抑制性ニューロン |
研究実績の概要 |
本研究では、QIHを誘導する詳細な神経基盤の解明を目的とした研究を実施した。 Qニューロンの約90%はVglut2陽性(興奮性、グルタミン酸作動性)だと既知であるが、当該研究によるこれまでの結果は、QIHでは「Qニューロンがグルタミン酸(興奮性神経伝達物質)ではなくGABA(抑制性神経伝達物質)を用いてDMH熱産生ニューロン群を抑制している」可能性を生じさせた。このことから、Vgat陽性(抑制性、GABA作動性)Qニューロンのみを興奮させることで、QIHが誘導されるか確かめる研究を実行した。このために、Qrfp-iCreマウスとVgat-Flpマウスを交配させたダブルトランスジェニックマウス系統を作製した。また、Vgat陽性(すなわち抑制性の)Qニューロンのみを特異的に興奮させるために、Cre酵素およびFlp酵素の両方に依存的にChR2(チャネルロドプシン2:青色光で興奮するオプシン)を発現させるAAVを作製した。このAAVをこのマウス系統のAVPe(Qニューロン)に微量局所投与し、行動実験終了後、脳サンプリングを行い、ChR2の発現の確認に成功した。加えて、上述の通りQニューロンの大多数はVglut2陽性の興奮性であることから、上記AAVが機能していることのポジティブコントロールのために、Qrfp-iCreマウスとVglut2-Flpマウスを交配させたダブルトランスジェニックマウス系統を作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Vgat陽性Qニューロンのみを特異的に興奮させるために、Cre酵素およびFlp酵素の両方に依存的にChR2をQニューロンに発現させる実験を行なったが、当初の想定よりもChR2が非常に弱い発現に止まった。その影響からか、この実験系ではQIHが誘導されなかった。おそらく使用したAAVの力価が低いことが原因と考えられる。当初の目的であった「Vgat陽性(抑制性、GABA作動性)Qニューロンのみを興奮させQIH誘導を再現すること」には成功していないため上記区分として評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新たに作製したQrfp-iCre::Vgat-Flpマウス系統、およびCre/Flp酵素の両方に依存的にChR2を発現させる高力価のAAVを用いることにより、Vgat陽性Qニューロンのみを興奮させQIH誘導を再現することを試みる。並行して、Qrfp-iCre::Vglut2-Flpダブルトランスジェニック系統を新たに作出し、Vglut2陽性(すなわち興奮性)Qニューロンのみに当該AAVによってChR2を発現させ、光刺激によりQIHが誘導かどうか検証する。加えて、Vgat陽性あるいはVglut2陽性に限定したQニューロンが、熱産生中枢であるDMHの興奮性ニューロンやRPaニューロンに軸索投射をしているか検証する。これらよりQIHが誘導される神経機構へのより詳細な知見が得られると考えられる。
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