研究課題/領域番号 |
22J10972
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
真次 彰平 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | グラフ / グラフ要約 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は実世界の大規模グラフに対する高圧縮率で高速かつ実用的なグラフ要約技術を開発することである.グラフ要約に関する既存手法では (1) 圧縮率の高い,(2) シングルスレッドで動作する,(3) 情報の欠損がないという3つの望ましいを同時に満たせない上,実行速度も十分ではない.本研究期間において,グラフのウェッジと呼ばれる連結な3ノードに着目してノードを集約するウェッジ分割法というアプローチ,およびその効率的な活用法について明らかにした.具体的には,理論解析を通じてウェッジ分割は各スーパーノード・スーパーエッジがなるべく密になるような分割を設計することで効率的になることを定理を用いて示し,それを実現するような3つのアルゴリズムを提案し,それぞれの性能を実験により評価した.我々の実験において,3つのアルゴリズムのうち最も効率的な分割を実現する提案手法は既存手法と比較して最大5ポイント圧縮率が高く,2.5倍高速で,情報の欠損がなく,実装が容易であるという優位性を実世界のグラフに対して実現した.本研究成果は現在1件の学術誌論文として投稿中である.今後の研究としては,更なる圧縮率の向上と要約グラフ上で動作するグラフ分析アプリケーションの開発を進める予定である.そのためのアイデアとしては,3ノード以上の要約を行うためのモジュラリティに基づくスーパーノードの作成,パス単位での集約方式や,コアツリー分解によるコア部とツリー部それぞれに対する最適化などが挙げられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究による提案手法は,当初初年度の数値目標としていた圧縮率を既に上回っており,その進展としては十分であると考える.しかしながら,本研究期間において競合となる最先端の手法が発表されたため,本研究の新規性・優位性をより明確にするためには,さらなる圧縮率の向上や高速化が望まれる. 以上のことから,従来より高性能な既存手法との実験による比較・差別化が次年度の課題として残る点を除いて,当初計画していた提案手法の設計・実装は完了しているため,おおむね順調に進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
次年度の本研究課題は次に示す二つの目標を達成する必要がある.一つ目に,新たに発表された対抗となる手法に対してより明確に優位性を主張できるよう,さらなる圧縮率の向上を目指す必要がある.具体的には,ウェッジ分割による3ノード単位の集約よりも大きなスーパーノードを作ることで,より高い圧縮率を目指す.そのためには,新たなスーパーノードの制約および格納フォーマットを設計しなくてはならない.二つ目に,当初の計画通り,要約グラフ上で高速に動作するアプリケーションアルゴリズムの開発を行う.こちらは原則として研究計画の通りに開発を進める予定ではあるが,一つ目に示した追加実装によりデータ形式が変わった場合,予定していたグラフ処理プリミティブであるTriangle Counting以外の処理に着目して研究を進める場合も考えられる.
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