本研究の目的は高速・高圧縮率なグラフ要約手法の確立と要約グラフを用いた高速・高精度なグラフ分析手法の開発である.最終年度では,当初の計画通り,初年度に開発したグラフ分析手法に関する次なる研究のステップとして,①さらに圧縮率の高い効率的なグラフ要約手法の開発,②要約グラフ上での応用的なグラフ分析手法の開発の2点に取り組んだ.また,初年度の研究成果をまとめた1編の学術誌論文が採択された. ①について,初年度に開発したウェッジ分割法には大きさが3以上のスーパーノードを構築できないという欠点があった.この問題を解決するために,申請者はグラフを再帰的にマージするというアイデアに基づき,ノードのマージを用いて大きなスーパーノードを構築するBranch-and-Merge法を提案した.この手法はk-plex探索に代表されるグラフ中のコミュニティ探索の技術領域において非常に要約性能が高いと考えられたため,グラフ中の最大k-plexを抽出する最大k-plex探索手法を開発した.この手法をまとめた2編の論文が国際会議に採択された. ②について,一般のグラフ要約手法において頻繁に用いられるプリミティブなアルゴリズムとして,要約グラフ上でのTriangle Counting問題とSingle Source Shortest Path問題の高速な解法を提案した.この手法をまとめた1編の論文を国内会議にて発表し,1編の学術誌論文を執筆中である. これら二つの研究実績を通じて,申請者の研究計画における目標は概ね達成されたといえる.
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