本年度は、前年度の取り組みに対する追加的検討として、パラメトリックスタディと損傷検知への応用可能性の調査、フィールド実験データでの精度を検証した。また、複数車両振動データ活用のための方法論開発と、複数車両・複数橋梁における詳細点検データの活用法についても検討した。研究成果として、2つの国際会議において、5件の研究成果を報告した。 パラメトリックスタディは、車両速度等について検討した。得られた結果によると、提案手法の精度を向上させるには、橋梁を十分揺らすことが重要である。損傷検知への適用性検討の結果によると、観測データに測定ノイズを考慮しない場合において、橋梁中央部だけでなく、橋梁端部における損傷評価も可能である。また、広範囲の損傷や複数損傷、全体損傷などの損傷シナリオにおいても、橋梁損傷の有無、位置、程度を判別できる。フィールド実験においては、路面の平坦性の評価は可能であるが、路面凹凸の推定精度は十分でなく、車両と橋梁のパラメータ推定には課題がある。 複数車両振動データの活用については、前年度において推定精度が向上することを土木学会論文集で報告した。しかし、本年度に行われた手法改良により、複数車両の振動データを用いる新たな目的関数の開発が求められる。複数車両・複数橋梁における詳細点検データの活用については、振動計測が実施されている橋梁を走行した場合を想定し、車両と橋梁の振動データでの精度を検証した。橋梁に設置するセンサの数を増やすことにより、推定精度の改善が期待される。また、車両のパラメータが高精度に判明している場合、橋梁のパラメータ推定精度は向上する。 今後解決するべき課題として、車両の三次元的応答・車両のタイヤ径・路面評価方法などを整理した。橋梁の安全性評価および保全技術に向けたさらなる実証実験と改良を継続していきたい。
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