研究課題
女性アスリートの健康問題として月経不順および無月経が挙げられる。これは想定される総エネルギー消費量に対しエネルギー摂取量が慢性的に不足していることにより、生殖機能等の生理機能を制限することで安静時代謝を低下させ、エネルギーバランスを維持しようとする“エネルギー代謝適応”が関連していると考えられる。しかし、安静時代謝の抑制が確認されないにもかかわらず無月経を誘発している事例も報告されており、女性アスリートの無月経とエネルギー代謝の関連の詳細は未だ不明である。そこで、本研究では、女性アスリートのエネルギー代謝適応における生理的反応および総エネルギー消費量の構成要素を、安静時代謝の約9割を占め、かつ覚醒の影響を受けないことから身体の生理機能をより明瞭に反映すると考えられる睡眠時代謝に着目して研究を進めてきた。睡眠時代謝は睡眠の質の影響を受けることから、採用後から初年度にかけて、月経の有無、月経周期、そして運動習慣の有無が睡眠の質及び睡眠時代謝に及ぼす影響を明らかにするため、女性ランナー(無月経および月経あり)と非アスリート女性(月経あり)を対象に安静時および睡眠時のエネルギー代謝測定を行った。月経を有する対象者に関しては卵胞期と黄体期の2回測定を行った。本対象者においては、月経の抑制に伴う安静時代謝および睡眠時代謝の抑制は確認されなかったものの、月経の有無は睡眠中のエネルギー消費量の変動に影響を及ぼしている可能性が示された。さらに睡眠中のエネルギー消費量に影響を及ぼす睡眠の質について、最も深い睡眠である徐波睡眠の発現タイミングが月経を有する女性ランナーと異なる可能性が示唆された。本研究は、無月経を有する若年女性ランナーのエネルギー代謝および睡眠関連因子を初めて示した基礎的知見である。
2: おおむね順調に進展している
予定していたように、女性ランナーおよび非アスリート女性を対象に月経の有無および月経周期に応じた横断的研究に取り組んだ。その結果、月経の有および月経周期の違いが、睡眠時代謝および睡眠の質に及ぼす影響は異なることを明らかにし、海外の学術誌に論文を投稿中である。したがって、本研究は当初の計画通りおおむね順調に進んでいる。
月経の変化に伴うエネルギー代謝の変化の縦断的関連性を調査するため、同意の取れた研究対象者の追跡調査を行い、因果関係を明らかにする。また、尿検体の安定同位体分析および性ホルモンの解析も2023年度に推進していく予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件)
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