本研究の目的はFe2+/Fe3+有機溶液における、(i)酸化還元電位Vおよび電気化学ゼーベック係数αの微視的理解、及び(ii)高効率な溶媒系の創出である。(ii)高効率な溶媒系の創出のためには、デバイス抵抗の主成分を求め、その支配要因を明らかにする必要がある。本年度は過塩素酸鉄を溶解させた様々な有機溶液において電気化学インピーダンス(EIS)測定を行い、溶液の抵抗成分の濃度依存性を調査した。酸化還元反応を伴う系の抵抗成分は大きく溶液抵抗R_s、電荷移動抵抗R_ct、拡散抵抗R_difに分類される。R_s、R_ctはEIS測定を行い、ランドロス等価回路解析によって決定した。また、R_difはデバイスの全抵抗からR_s、R_ctの差分をとり評価した。その結果、すべての溶液でR_s、R_difが抵抗の主成分であることが明らかになった。また、R_s、R_ctについて、溶液の粘度と濃度のパラメータから濃度依存性の傾向を再現することが確認された。このことから、溶液の粘度を低減させることでR_s、R_difが低減し、高効率な溶媒系の創出が期待される。 この他に進めた研究内容を以下に示す。 ・[Fe(CN)6]3-/[Fe(CN)6]4-水溶液に有機溶媒を添加し、意図的に沈殿を引き起こすことでαの増大を確認し、それを濃度勾配モデルによって定量的に再現した。 ・Fe2+/Fe3+DMF溶液において、2価と3価の溶質溶解度の差を利用し、αを増大させることに成功した。 ・塗布型グラファイト電極によってR_ct、R_difが低減し、出力特性の向上に成功した。
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