本研究では、デグロンと標的タンパク質の間に、細胞内の脱ユビキチン化酵素によって切断される基質配列を挿入することで、低分子化合物を添加し、デグロン融合タンパク質が安定化された後、細胞内の脱ユビキチン化酵素の活性により、標的タンパク質からデグロンを切り離すシステムを構築する。発現制御法としての基本的性能を明らかにするとともに、ゲノム編集技術を用いて、内在性タンパク質の発現制御への適用を目指す。令和4年度は、本デグロンシステムにより、内在的に発現するタンパク質の存在量を制御することが可能であるかを検討するため、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて、標的タンパク質c-SrcのN末端にデグロンおよび切断基質配列を挿入した。P2A配列上流に接続したpuromycin耐性遺伝子と、デグロンおよび切断基質配列を標的領域に相同な配列で挟んだ遺伝子を含むドナープラスミドを、標的遺伝子に対するガイドRNAの鋳型となる遺伝子配列を含んだCas9発現ベクターとともに、ヒト1倍体細胞であるHAP1細胞に遺伝子導入した。Puromycinによる導入細胞の薬剤選択後、シングルセルクローニングを行い、PCRによるジェノタイピングにより、ノックインを確認した。さらに、ウエスタンブロットにより、デグロンと切断基質配列を付加した内在性c-Srcが、化合物添加時に、安定化され、c-Srcからデグロンが切り離されることを確認した。
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