研究課題/領域番号 |
21J23365
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
萩原 拓真 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
キーワード | オジギソウ / 傾性運動 / 電気生理 / Ca2+イメージング |
研究実績の概要 |
これまでの我々の研究から、オジギソウの葉において、傷害刺激によって発生するCa2+シグナルが、長距離を伝達しながら高速運動を引き起こすことが示唆されていたが、このCa2+シグナルと、古くから知られていた電気シグナルとの関係は不明であった。Ca2+バイオセンサーであるGCaMP6fを発現したオジギソウの葉に傷害刺激を与え、Ca2+シグナルと電気シグナルを同時測定したところ、これらのシグナルの伝達速度は非常に近いことが明らかになった。また、Ca2+チャネルブロッカーであるLa3+や、Ca2+のキレート剤であるEGTAを処理した葉においては、傷害刺激を与えても、これらのシグナルが伝達しなくなることが分かった。 オジギソウの葉の高速運動の生理学的意義を検証するにあたり、野外で採集したオンブバッタ成虫と、オオタバコガ幼虫の飼育条件を検討し、これらの昆虫を数か月に渡って維持できるようにした。続いて、水を処理した通常の葉と、La3+処理によって動かなくなった葉を隣り合わせに配置し、上記の昆虫に食べさせたところ、動かない葉の方が、より多く食害を受けることが明らかになった。加えて、これらの昆虫は、動かない葉の上により長く滞在することも分かった。 以上より、昆虫の食害によって発生したCa2+/電気シグナルが、長距離を伝達しながら連続的に高速運動を引き起こし、その高速運動が昆虫に対する防御として働くことが考えられ、昆虫による葉の食害から、食害防御までの一連の流れを推定することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オジギソウの葉において、傷害刺激によって発生するCa2+シグナルと電気シグナルの同時測定を行うことに成功し、これらのシグナルの伝達速度が非常に近いことを明らかにした。さらにLa3+などの薬剤を併用することによって、Ca2+シグナルの伝達を阻害すると電気シグナルの伝達も阻害されることを明らかにした。また、オジギソウの葉の高速運動が、昆虫に対する食害防御であることを示唆するデータを得たことで、昆虫による葉の食害から、食害防御までの一連の流れを推定することができた。現在、上記の成果を論文にまとめ、学術誌に投稿中である。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの我々の研究から、オジギソウの葉に傷害刺激を与えると、運動器官である葉枕の細胞の細胞質におけるCa2+濃度([Ca2+]cyt)の上昇が起こり、その後に小葉の運動が起こることから、[Ca2+]cyt上昇が高速運動のトリガーである可能性が示唆されていた。しかし、Ca2+がどのように高速運動を引き起こすのかについては、依然として不明であった。 今後は、[Ca2+]cyt上昇の下流に存在する可能性のある高速運動関連因子の同定のため、アグロバクテリウムを利用した形質転換技術などを用いて、アクアポリンやCa2+-dependent protein kinaseなどの候補遺伝子の破壊株を作出していく。破壊株の作出が済み次第、葉の高速運動の様子を観察することで、高速運動の大きさや速さに変化がみられるかどうかを解析し、高速運動関連遺伝子を同定したいと考えている。
|