細胞レベルでCa2+シグナルと活動電位を測定するため、Ca2+バイオセンサーのGCaMP6fを発現するオジギソウの葉の葉柄の表面を削り、活動電位を伝播させる興奮性細胞を露出させようとしたが、どの細胞が興奮性細胞か決定することが困難であった。そこで、葉柄の代わりに、興奮性細胞を容易に判別できる小葉枕を使用することにした。GCaMP6fを発現するオジギソウの葉の小葉枕を切断し、活動電位を発生する運動細胞(皮層細胞)を表面に露出させ、共焦点レーザー顕微鏡のステージ上に固定した。ガラス微小電極を細胞に挿入したところ、負の電位差が記録された。この負の電位差は、過去に主葉枕の運動細胞で記録された静止膜電位の値に比較的近いことから、小葉枕の運動細胞の静止膜電位を記録することができたと考えられる。しかし、この状態で小葉枕に接触刺激を与えたが、Ca2+シグナルも活動電位も発生しなかった。 細胞レベルでのCa2+シグナルと活動電位の測定が困難であったため、広視野Ca2+イメージングと表面電位測定を組み合わせた系を使用して、羽片中軸を伝播する活動電位のメカニズムの推定を試みた。アニオンチャネルブロッカーとして使用されているアントラセン-9-カルボン酸を葉に処理すると、小葉を傷つけても、活動電位だけではなく、Ca2+シグナルの伝播も起こらなくなることが分かった。前年度までの成果と併せて考えると、活動電位の伝播にはCa2+とCl-の両方が必要な可能性がある。 現在までに得られた成果を総説にまとめて投稿し、国内の雑誌に受理された。成果を国際学会でも発表した。
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