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2023 年度 実施状況報告書

超広視野Ca2+イメージングを利用した植物の匂い感受機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22KJ0451
配分区分基金
研究機関東京理科大学

研究代表者

上村 卓矢  東京理科大学, 先進工学部生命システム工学科, 助教

研究期間 (年度) 2023-03-08 – 2025-03-31
キーワード揮発性有機化合物 / シロイヌナズナ / カルシウムシグナル
研究実績の概要

害虫食害を受けた植物から放出された香気成分を受容した近隣の健全植物では、害虫抵抗性が誘導される(植物間コミュニケーション現象)。しかしながら、植物がどのように匂い物質を受容し、その情報を防御シグナルへと変換するのかという植物の匂い感知システムについては未解明な部分が多い。本研究では、植物の匂い応答を時空間的に明らかにしつつ、匂い応答を制御する分子の単離を目指す。これまでにカルシウムバイオセンサーであるGCaMP3を発現したシロイヌナズナを用いて、みどりの香り成分である(Z)-3-ヘキセナールがシロイヌナズナに迅速なカルシウムシグナルを発生させることを明らかにしており、昨年度はシロイヌナズナの(Z)-3-ヘキセナール応答を細胞レベルで可視化し、気孔の役割を明らかにした。ここまでの結果を原著論文としてまとめ、発表した。
また、シロイヌナズナの(Z)-3-ヘキセナール応答を制御するカルシウムチャネルの単離を目指し、CRSIPR-Cas9システムを用いた候補遺伝子の二重変異体の作出に取り組んだ。現在、当該二重変異体における(Z)-3-ヘキセナール誘導性カルシウムシグナルの解析を進めている。さらに、GCaMP3発現シロイヌナズナに対してEMS変異原処理を行い、(Z)-3-ヘキセナール応答能が低下した系統を複数種単離していたが、昨年度はM3植物体に対してMutmap法を用いた全ゲノムシークエンス解析を行った。その結果、変異系統におけるDNA変異箇所の同定に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度は、シロイヌナズナにおける(Z)-3-ヘキセナール誘導性カルシウムシグナルを細胞レベル、組織レベルでリアルタイムに可視化した。変異体や薬理学的な手法を用いることで、当該応答には気孔が重要な役割を果たすことを明らかにした。ここまでの研究成果を論文として報告することができた。
また、当該応答を制御するカルシウムチャネル遺伝子を単離するために、候補遺伝子の変異体作出およびGCaMP3の形質導入を試みていた。しかしながら、候補遺伝子の単一欠損株におけるカルシウムシグナルは野生株と有意な差が観察されなかったことから、CRISPR-Cas9システムを利用した二重遺伝子欠損株の作出を進めてきた。未だにカルシウムチャネル遺伝子の選抜は達成できていないものの、現在までにGCaMP3発現二重変異体が複数系統において作出できている。
さらに、GCaMP3発現シロイヌナズナにEMS変異原処理を行い、M2植物体において(Z)-3-ヘキセナール誘導性カルシウムシグナルを大規模に解析し、候補系統のスクリーニングを昨年度から実施してきた。野生株と比較してカルシウムシグナルが変化していたものが複数系統単離されたため、M3植物をMutmap法を利用した全ゲノムシークエンス解析に供した。その結果、各系統においてDNA変異領域が異なることがわかり、現在候補遺伝子の選抜に着手している。

今後の研究の推進方策

今年度はCRISPR-Cas9システムによって作出したカルシウムチャネル二重変異体における(Z)-3-ヘキセナール誘導性カルシウムシグナルを解析する予定である。作出系統の中に、野生株と比較してカルシウムシグナルが減衰するものがあれば、当該系統における(Z)-3-ヘキセナール誘導性電気シグナルや防御遺伝子発現等を解析する予定である。候補二重欠損体において有意にカルシウムシグナルが変化したものが検出できなかった場合、さらに三重変異体の作出にも着手する。
MutMap法を用いたENS処理系統の全ゲノムシークエンスを行ったことで、各系統においてDNA変異が確認された領域を絞り込むことに成功した。当該領域には多くの遺伝子が配置されていることから、カルシウムシグナルの発生への関与が示唆される遺伝子のT-DNA挿入株をABRCから入手する。これらのT-DNA挿入株にGCaMP3を発現させ、(Z)-3-ヘキセナール誘導性カルシウムシグナルを解析する。

次年度使用額が生じた理由

昨年度は論文受理を目指し、論文再投稿のためのデータ収集を優先したことで、当初予定していた学会での研究成果報告発表を見送った。そのため、旅費として計上していた予算を次年度に持ち越したい。さらに、(Z)-3-ヘキセナール誘導性カルシウムシグナルを制御するカルシウムチャネル遺伝子の選抜が未だに完了していないことから、候補遺伝子の機能を詳細に明らかにするための分子生物学実験の遂行に充てる予定だった予算を次年度に持ち越すことにした。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Green leaf volatile sensory calcium transduction in Arabidopsis2023

    • 著者名/発表者名
      Aratani Yuri、Uemura Takuya、Hagihara Takuma、Matsui Kenji、Toyota Masatsugu
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 ページ: 6236

    • DOI

      10.1038/s41467-023-41589-9

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2024-12-25  

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