研究課題/領域番号 |
22J01332
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
松永 光司 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | DNAアプタマー / 金ナノ粒子 / ウイルス / レジオネラ細菌 / 細胞外小胞 |
研究実績の概要 |
本年度は、当初計画していた研究について着手する順番を変更し、「獲得したDNAアプタマーを用いたアプタセンサー開発」から着手した。使用したDNAアプタマーは、これまでに選抜したレジオネラ細菌結合型DNAアプタマーと、細胞外小胞(sEV)結合型DNAアプタマーを用いた。シグナル物質は金ナノ粒子を使用し、金ナノ粒子表面にDNAアプタマーを修飾した金ナノ粒子プローブ溶液を作製した。 レジオネラ細菌結合型DNAアプタマーを用いたアプタセンサーの開発では、諸条件の検討後にレジオネラ細菌の有無による金ナノ粒子の吸収スペクトル変化を観察した。試料中にレジオネラ細菌が存在しないと、AuNPsは凝集して青色になり、650 nmの波長付近に吸収スペクトルのピークが検出された。一方で試料中にレジオネラ細菌が存在すると、金ナノ粒子表面に修飾したDNAアプタマーがレジオネラ細菌と結合し、金ナノ粒子が分散を維持して赤色になり、520 nmの波長付近に吸収スペクトルのピークが検出された。従って、本法で試料中のレジオネラ細菌の有無を高感度かつ半定量的に分析できた。 sEV結合型DNAアプタマーを用いたアプタセンサーの開発についても、レジオネラ細菌を標的としたアプタセンサーの構築と同様に実施した。しかしながら、本法はsEVが分散している培養液中に存在する血清由来のタンパク質によるバックグラウンド阻害を受けた。本研究の最終目標はウイルスを標的としたアプタセンサーの構築であり、ウイルスと共存する培養液中の共存タンパク質による阻害を受けることは予想できる。そのため、今後は共存するタンパク質によるバックグラウンド阻害を受けないセンサーの構築を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初計画していた研究の着手する順番を変更し、獲得したDNAアプタマーを用いたアプタセンサー開発から着手し、シグナル物質として金ナノ粒子を用いたアプタセンサーの構築を実施した。その結果、レジオネラ細菌結合型DNAアプタマーを金ナノ粒子に修飾した金ナノ粒子プローブは、標的としたレジオネラ細菌を特異的に検出できた。一方で、細胞外小胞を標的とした場合、培養液中に共存するタンパク質による阻害を受けたことが判明した。本研究の最終目標であるウイルスを標的とした場合、共存するタンパク質による阻害を抑える必要があると考え、金ナノ粒子ベースのセンサーの作製の過程で何かしらの対策を講じる、もしくは金ナノ粒子以外のシグナル物質を用いたアプタセンサーの開発を実施する必要が出た。しかしながら、上記の課題を早期に発見できたのは大きな進捗であると考え、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、当初計画していたウイルスを標的とした新規DNAアプタマーの選抜を実施する。標的はヒトコロナウイルスとアデノウイルスを用いて実施する予定である。また、1年目で発見したアプタセンサー構築の際に生じる、金ナノ粒子表面へのタンパク質の非特異的に吸着する課題を解決する。具体的には、金ナノ粒子表面に目的のDNAアプタマー修飾後に、単一配列のDNA等を金ナノ粒子表面に吸着させ、タンパク質等の金ナノ粒子表面への非特異的吸着を予防する。また、量子ドット等の金ナノ粒子以外のシグナル物質を用いたセンサーの構築や、DNAアプタマーに色素等のシグナル物質を修飾させ、ナノ粒子等のデバイスを用いないアプタセンサーの構築を試みる。
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