研究課題/領域番号 |
21J00537
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
朝岡 陸 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 時間知覚 / 多感覚相互作用 / 多感覚情報統合 / 知覚的群化 / 視覚 / 聴覚 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,視覚の時間間隔知覚メカニズムにおける多感覚間・感覚内相互作用過程の影響を解明することである。令和3年度は,時間間隔知覚の課題対象である視覚刺激の前後に課題に関連しない視覚・聴覚刺激(誘導刺激)を提示すると,知覚時間が短くなる現象について検討を進めた(短縮効果)。その結果,視覚誘導刺激と聴覚誘導刺激は同様の短縮効果をもたらすものの,その生起メカニズムは異なることが示唆された。視覚誘導刺激の場合には,先行する刺激のみが提示された場合の知覚時間に対する影響と,後続する刺激のみの影響を単純に加算することで,短縮効果を予測可能であった(加算効果)。一方,聴覚誘導刺激の場合には,加算効果よりも,多感覚相互作用研究でよく用いられる最尤推定法の方が適当であった。つまり,視覚刺激のみに対して感じられる知覚時間と,聴覚刺激が2回提示される間に対する知覚時間を別々に測定して,それらの加重平均を取ると,短縮効果を予測可能であった。これらの結果は時間間隔知覚における感覚間・感覚内相互作用の差異点を強調するという点で重要である。この研究成果は英語論文として,現在国際学術誌に投稿中である。さらに,視覚誘導刺激の場合には,視覚刺激間での刺激類似性が短縮効果に影響することも明らかにした。具体的には,課題対象である視覚刺激と視覚誘導刺激間で形や明るさが似ていると,短縮効果が生起しにくかった。この結果は時間間隔知覚プロセスにおいて類似性に基づく知覚的なまとまりが重要な役割を担うことを示唆する。この研究成果も英語論文として,現在国際学術誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は,実験環境の構築に時間がかかってしまったことや,コロナ禍を考慮したなどの理由のため,当初予定していた触覚刺激を用いた実験を実施できなかった。一方,視覚刺激の時間間隔知覚において視覚内相互作用と視聴覚相互作用の影響を検討し,それらは異なるメカニズムを持つことを明らかにした。また,視覚内相互作用については,刺激間の類似性に基づく知覚的群化が知覚時間の変容に重要な役割を果たすことを示した。これらの実験は一部令和4年度に実施予定の実験であったことや,既にこれらの研究成果が英語論文として国際学術誌に投稿中の段階であることから,総合的に見ておおむね順調に進展している評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,令和3年度に実施できなかった触覚刺激を提示する実験を実施していく。令和3年度に引き続き触覚刺激装置を含んだ実験環境構築を行い,準備が整い次第,視覚刺激の時間間隔知覚に触覚刺激の提示が及ぼす影響を検討する。並行して令和5年度に実施予定の脳波測定の準備を行う予定である。
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