研究課題/領域番号 |
21J20498
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
磯辺 篤 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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キーワード | 超分子ポリマー / トポロジー / 湾曲 / フォールディング / 速度論 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、直径20 nm程度の螺旋やリング構造へと自己集合するモノマーと光応答性モノマーを超分子共重合させ、ナノスケールでトポロジー制御された光応答性超分子ポリマーの構築とその動的構造制御を目的としている。しかし、当初の目的を達成する上で最適な超分子共重合条件やモノマー構造を発見できていない。 本年度は上記の目標を達成するべく、さまざまな分子の自己集合を調査する中で直線状超分子ポリマーが湾曲した超分子ポリマーへと自発的に巻き上がる現象を見出した。原子間力顕微鏡・小角X線散乱測定によって、この構造転移を実証した。さらに、分光スペクトルによって構造転移の過程・メカニズムを解明することに成功した。 また、所属研究室が以前報告した湾曲性超分子ポリマーを形成する分子のπ共役部位にメチル基を1個導入した分子を新規に合成し、その自己集合挙動を調査した。その結果、新規分子は湾曲性を失ったロッド状の構造へと自己集合した。分光およびX線散乱測定、分子力場計算による分子構造の最適化を行ったところ、メチル基の立体障害により会合様式が劇的に変化することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的である光応答性ブロックコポリマーの構築は、最適な超分子共重合条件やモノマー構造を発見できずにいる。しかし、次年度以内に目的を達成できる兆候は見えている。 本年度は、本来の目的である光による動的構造制御と異なるが、自発的に湾曲した構造へと主鎖をフォールディングする現象を見出した。フォールディングの過程やメカニズム、分子構造とフォールディングの相関を解明することができれば、主鎖の動的な構造変化に基づく超分子材料の開発の糸口になると考えられる。 また、本研究の目的を達成するために必要な超分子ポリマー主鎖の動的な構造変化は、主鎖の湾曲性に基づく。したがって、主鎖の湾曲性発現のメカニズムの解明することができれば、動的構造変化を起こすモノマー分子の設計の指針になると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も光応答性ブロックコポリマーの構築に向けて、最適な超分子共重合条件や分子構造の検討を引き続き行っていく。 フォールディング現象に関しては、高速原子間力顕微鏡を用いてin-situ観察を試みる。in-situ観察を達成することができれば、分光測定で示唆されたフォールディングメカニズムを強固に裏付けできると考えている。 メチル基を導入した分子については、先行研究の分子とX線回折・示差走査熱量測定等を行い、溶液中での自己集合だけでなく、バルクにおけるメチル基導入の影響を先行研究の分子と比較しながら議論する。混合による共会合に関しては、2種の分子の混合比を変えることによって、得られる超分子ポリマーの構造・共会合過程・フォールディング現象がどのように変化するかを分光測定や小角X線散乱測定を用いて調査していく。さまざまな測定を駆使し、メチル基が自己集過程や分子間相互作用に与える影響を明らかにすることができれば、当研究室で用いているπ共役分子が湾曲性を生み出しながら自己集合するメカニズムを解明できると考えている。
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