本年度は、擬1次元励起子絶縁体候補物質の有効模型について、系の擬1次元性を考慮した解析を行うため、密度行列繰り込み群法 (DMRG)の2次元系への拡張に関する研究を行った。本年度の研究成果は以下の2つである。 1. 2次元量子系の境界条件としてスパイラル境界条件 (SBC)を導入することで、2次元の格子系を周期的な1次元鎖に厳密にマップする方法について研究した。まず、2次元正方格子とハニカム格子上のtight-binding模型について、SBCによる周期的1次元鎖へのマッピングの方法を示し、基底状態のエネルギーと分散関係や状態密度が熱力学極限へ近づいていく様子を確認した。次に、2次元正方格子上のHubbard模型の基底状態のエネルギーとXXZ模型のスタッガード磁化をDMRGを用いて計算し、熱力学極限へのサイズスケーリングを行った。得られた結果を厳密解や先行研究と比較し、十分な精度で熱力学極限での物理量を評価することができることを確認した。 2. SBCによってマップされた1次元鎖を開境界で扱うことによって、DMRGでの計算コストを削減し、2次元量子系の局所的な秩序変数を精度良く計算する方法の提案を行った。ベンチマークとして、2次元正方格子上のXXZ模型について、基底状態のスタッガード磁化をXXZ異方性や系のスピンの大きさを変えてDMRGで計算し、熱力学極限での値を評価した。得られた結果を先行研究と比較することにより、DMRGでは計算することが難しいXY相やスピンの大きい場合にも十分な精度で計算が可能であることを確認した。
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