ベーチェット病モデルマウスを作製するにあたり,前年度に引き続き,キメラ型HLA-B*51:01導入マウスについて,戻し交配を行い,9回完了した。 本年度は,HLAが関与した皮疹の原因と考えられる小胞体ストレスの原因として,HLAが”不良品”として小胞体に認識されることを見出すべく,研究を行った。昨年度までに,(1) HLA多型特異的なアバカビル誘発性の小胞体ストレスがケラチノサイトにおいて生じること,(2) アバカビル誘発性のHLA多型特異的な皮疹には小胞体ストレスが関与している可能性を認めていた。本年度は,ケラチノサイトにおけるHLA多型依存的に生じる小胞体ストレスのメカニズムの検討を進め,以下のことを明らかにし,HLAが関与した皮疹発症の機序を考えるには“HLA複合体の構造不安定性”に着目することが突破口となるという当初の仮説を支持する結果を得た。①アバカビルは,HLA-B*57:01と細胞内で結合することを実証した。②ケラチノサイトにアバカビルを曝露した際,HLA-B*57:01へのBiPの結合が多く確認された。③ケラチノサイトにアバカビルを曝露した際,HLA-B*57:01が細胞内で凝集する様子が確認された。 以上の発見は,アバカビル過敏症に限 らず,ベーチェット病などのHLAが関与した免疫学的機序に基づく疾患による皮疹発症機序の解明を前進させたと考えている。
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