研究課題/領域番号 |
22J14138
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
篠崎 真良 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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キーワード | 常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置 |
研究実績の概要 |
医療従事者の救急活動能力を抜本的に高める次世代型生体計測装置による爪床圧迫テスト定量化の基礎検討として,常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置を開発した.開発した測定装置の精度評価のために過去に開発したモータと一軸移動ステージで構成した圧迫標準化装置と測定値の一致性を評価した.その結果,開発した常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置と圧迫標準化装置の測定値は一致性を示した.血管閉塞試験により,仮想的に末梢循環不全を引き起こし,常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置における末梢循環不全のカットオフ値を検討した.常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置の普及によって臨床現場における簡便かつ定量的な微小循環のモニタリングに貢献できる可能性が示された.爪床圧迫テスト用の次世代型生体計測装置を試作し,常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置と測定値の一致性を評価した.その結果,次世代型生体計測装置と常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置の測定値は一致性を示した.したがって,次世代型生体計測装置による爪床圧迫テストの定量化は実現可能性がある.常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置ではカラーセンサで計測した爪床色の回復曲線から毛細血管再充満時間を計算する.しかし,ノイズや脈波の重畳により,不良データが計測された場合計測精度に影響する.この不良データを判定する手法としての深層学習の有効性を評価した.力センサによって計測した外部圧力から非侵襲的に静脈圧を計測できるか下腿を模擬したファントムを作成し基礎実験した.その結果,外部圧力からファントムの静脈内圧を推定でき,次世代型生体計測装置による非侵襲的静脈内圧推定手法の実現可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医療従事者の救急活動能力を抜本的に高める次世代型生体計測装置による爪床圧迫テスト定量化の基礎検討として,常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置を開発した.この装置は測定者の手動圧迫を毛細血管再充満時間の測定における最適圧迫条件に誘導するフィードバック機能を有している.このフィードバック機能によって,圧迫条件の測定者間変動が低減され,従来の測定手法と比較して測定の安定性が向上することが明らかになった.過去に開発した圧迫標準化装置との一致性評価を実施し,常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置が圧迫標準化装置の代替となることを明らかにした.また,医療従事者の救急活動能力を抜本的に高める次世代型生体計測装置を試作し,常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置との一致性評価を実施した.その結果,次世代型生体計測装置は,常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置の代替となることを明らかにしその実現可能性を示した.この評価から次世代型生体計測装置の改良点を検討した.常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置によって計測される不良データを深層学習によって判定するシステムの基礎実験を実施した.その結果,VGG16を用いたシステムにおいて正確度0.83を達成し深層学習を用いた不良データ判定システムの有効性を示した.そして,次世代型生体計測装置による非侵襲的静脈圧計測が実現可能か下腿を模擬したファントム実験で評価した.その結果,力センサにより計測した外部圧力から静脈内圧を推定できる可能性が示された.毛細血管再充満時間の機序解明に向けた指先の解剖学的構造とその相互作用の生理物理モデルの構築に向けて学会の聴講や専門書の調査を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
毛細血管再充満時間の機序解明に向けて,常時携行型爪床圧迫テスト定量化装置を用いて患者を対象とした測定実験を実施する.具体的には,敗血症性ショックや循環器系の疾患を罹患した患者, 救急医療を必要とする患者を対象として毛細血管再充満時間を計測し,バイタルサインとの関連を評価する.また学会の聴講や専門書の調査を継続し,指先の解剖学的構造とその相互作用の生理物理モデルの構築を目指す.医療従事者の救急活動能力を抜本的に高める次世代型生体計測装置を試作した結果,センサとマイコンを接続する配線や装着者の指先にセンサを固定することで,ヒトが持つ触覚や感覚が損なわれユーザビリティが低下することが判明した.そこで,印刷回路技術を応用したウェアラブルデバイスを開発することで課題解決を目指す.そして,毛細血管再充満時間と脈拍,酸素飽和度を同時計測できる次世代型生体計測装置に改良する.改良後,次世代型生体計測装置の有効性評価を医療機関と連携して実施する.爪床色の回復曲線を時系列解析し,不良データの判定し補正する手法を提案し計測装置へ導入する.導入前後で測定精度を比較し提案手法の有効性を評価する.
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