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2022 年度 実績報告書

高精度EITを用いた皮下脂肪組織評価による非侵襲的リンパ浮腫早期発見法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 22J21174
配分区分補助金
研究機関千葉大学

研究代表者

小川 良磨  千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2022-04-22 – 2025-03-31
キーワード電気インピーダンス / トモグラフィ / スパースベイズ学習 / 画像再構成 / 可視化計測
研究実績の概要

本研究課題は、電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)法の高精度化による新たなリンパ浮腫早期発見法の確立を目的としており、2022年度は、本研究課題の1年目にあたる。本年度では、「皮下脂肪組織の局所的可視化計測」に関する研究を実施した。
従来のEIT法では、導電率の時間・空間変化が局所的に生じる場では、測定したインピーダンスに及ぼす影響が非常に小さく、導電率の局所的可視化計測は難しかった。そこで本研究では、このような可視化計測の問題を解決すべく、局所的変化を抽出可能なスパースベイズ学習(SBL)を用いた周波数差EIT(fdEIT)を提案した。提案手法は、ステップ1: ブロック列ベクトル形成、ステップ2: 導電率の先験情報を用いた皮下脂肪識別、ステップ3:時間相関抽出から構成される。提案手法を評価すべく、第一に、数値シミュレーションにより再構成画像の精度について検証した。皮下脂肪組織と筋肉であるバックグラウンドの導電率が大きく時間変化する場に対して、静脈付近の導電率の時間・空間局所的変化を抽出して、その精度を定性的に検討し、さらに、静脈・皮下脂肪組織・筋肉それぞれの導電率比をパラメータとして、定量的に検討した。第二に、健常者15名に対して長時間立位と脚拳上により下肢浮腫を発生させる実験を行い、細胞外液の時間・空間局所的変化の可視化計測を行った。皮下脂肪組織の空間平均導電率は、従来法である生体電気インピーダンス法(BIA)によるインピーダンスと強い正の相関を示し(相関係数0.715<R<0.957、n=15、p<0.05)、長時間立位時に減少し、脚拳上時に増加した。皮下脂肪組織の空間平均導電率は皮下細胞外液のナトリウムイオン濃度変化と関連し、導電率の局所的最大位置は大伏在静脈と関連していたことも確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「レシオメトリック電圧比*Vを利用した脂肪層空間領域Ωの正確な識別法の構築」が、2022年度目標であったが、順調に進展し、学会誌への発表を達成した(Ryoma Ogawa, et al., IEEE Trans. on Inst. and Meas., 2022.)。さらに、その識別法を前処理として用いた高精度な画像再構成法として、局所的変化を抽出可能なスパースベイズ学習(SBL)を用いた周波数差EIT(fdEIT)を提案し、学会誌への発表を2報を達成した(①小川良磨ら,日本機械学会論文集(生体工学,医工学,スポーツ工学,人間工学),2022. ②Ryoma Ogawa, et al., IEEE Trans. on Inst. and Meas., 2022.)。
以上より、当初の計画通り順調に進展している。

今後の研究の推進方策

2022年度までに達成した、レシオメトリック電圧比*Vを利用した脂肪層空間領域Ωの正確な識別法の構築と、局所的変化を抽出可能なスパースベイズ学習(SBL)を用いた周波数差EIT(fdEIT)を提案し、健常者の起立性浮腫の評価に対して適用した。起立性浮腫は多くの浮腫疾患の基礎となることから、今後は、上記の起立性浮腫データに対してより詳細な周波数解析を実施することで、応用性を向上させる。具体的には、緩和時間分布(DRT)の解析を含めたナトリウム濃度やタンパク濃度に関する緩和周波数の特定を行う。また、上記の起立性浮腫データは下腿のみであったが、大腿用センサーも現在準備中であり、浮腫の3D分布の特性を評価する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Multifrequency Electrical Impedance Tomography with Ratiometric Preprocessing for Imaging Human Body Compartments2022

    • 著者名/発表者名
      Ryoma Ogawa, Marlin Ramadhan Baidillah, Panji Nursetia Darma, Daisuke Kawashima, Shinsuke Akita, and Masahiro Takei
    • 雑誌名

      IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement

      巻: 71 ページ: 1-14

    • DOI

      10.1109/TIM.2022.3166796

    • 査読あり
  • [雑誌論文] スパースベイズ学習(SBL)による時間・空間局所的変化を抽出できる電気インピーダンストモグラフィ(EIT)の画像再構成アルゴリズム2022

    • 著者名/発表者名
      小川良磨,秋田新介,武居昌宏
    • 雑誌名

      日本機械学会論文集(生体工学,医工学,スポーツ工学,人間工学)

      巻: 88-910 ページ: 22-00090

    • DOI

      10.1299/transjsme.22-00090

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Local-spatiotemporal Change Monitoring in Extracellular Fluid by Time-variation-constraint Sparse Bayesian Learning Implemented into Frequency-difference Electrical Impedance Tomography (tvcSBL-fdEIT)2022

    • 著者名/発表者名
      Ryoma Ogawa, Shinsuke Akita, and Masahiro Takei
    • 雑誌名

      IEEE Transactions on Instrumentation and Measurement

      巻: Early Access ページ: 1-14

    • DOI

      10.1109/TIM.2022.3220282

    • 査読あり
  • [学会発表] 電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)法によるリンパ浮腫重症度評価の実現可能性の検討:前向き観察研究2023

    • 著者名/発表者名
      小川良磨,秋田新介,武居昌宏
    • 学会等名
      第6回日本リンパ浮腫学会
  • [学会発表] イノベーションを実現しよう:工学系とのマッチングプラザ2023

    • 著者名/発表者名
      小川良磨,武居昌宏
    • 学会等名
      JCS2023 第87回日本循環器学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] スパースベイズ学習(SBL)を用いた周波数差電気インピーダンス・トモグラフィ(fdEIT)による細胞外液の時間・空間局所変化の可視化2022

    • 著者名/発表者名
      小川良磨,秋田新介,武居昌宏
    • 学会等名
      第61回日本生体医工学会, OS1-2-1-4
  • [学会発表] 電気インピーダンス・トモグラフィ法によるリンパ浮腫早期発見のための大伏在静脈近傍の間質水分量の時間・空間局所的変化の可視化計測2022

    • 著者名/発表者名
      小川良磨,秋田新介,武居昌宏
    • 学会等名
      第6回日本リンパ浮腫治療学会,O9-6
  • [備考] 千葉大学武居研究室

    • URL

      https://tomocloud.xsrv.jp/takei-lab/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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