研究課題/領域番号 |
22KJ0485
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小川 良磨 千葉大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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キーワード | 電気インピーダンストモグラフィ / スパースベイズ学習 / 画像再構成 / 可視化計測 / リンパ浮腫 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)法の高精度化による新たなリンパ浮腫早期発見法の確立を目的としており、本年度は、前年度に構築した「皮下脂肪組織の局所的可視化計測」アルゴリズムの改善に向けて、多くの臨床研究を遂行した。 具体的には、従来のEIT法の、画像がぼやける為局所的可視化計測は難しい、という課題の解決策として、局所的変化を抽出可能なスパースベイズ学習(SBL)を用いた周波数差EIT(fdEIT)を、健常者実験、および、リンパ浮腫患者試験へと適用した。 健常者実験については、長時間立位と脚拳上により下肢浮腫を発生させるプロトコルを策定し、前年度の2D可視化計測だけではなく、大腿・下腿部それぞれにおける3D可視化計測をも実施した。 一方、リンパ浮腫患者試験については、Maegawa 分類による各重症度(Type I~Type V)に該当のリンパ浮腫患者19例、および健常者8例を対象としてEIT法による2D可視化計測を行った。また、リンパシンチグラフィとSPECT-CTの画像所見を定性評価の比較対象、Maegawa 分類と国際リンパ学会(ISL)分類とを定量評価の比較対象とした。定性評価として、症例に応じて皮下脂肪層における局所的変化がEIT法により画像再構成され、既存手法によるリンパうっ滞が顕著な部位の導電率変化が大きかった。また、定量評価として、導電率変化の空間平均値は重症度に伴い増加した。尚、その空間平均値を取得する領域として大腿内側に限定した場合に最も精度が高く、Maegawa 分類Type I以降をリンパ浮腫と判断して感度71%、特異度85%、ISL分類0期以降をリンパ浮腫と判断して感度67%、特異度100%を達成した(ROC(受信者動作特性)に基づくカットオフ値Youden Indexを使用)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「高精度リンパ浮腫早期発見法の確立」が、2023年度目標であったが、順調に進展し、多くの学会発表を達成した。特筆すべきは「第7回リンパ浮腫治療学会学術集会 最優秀演題賞」を受賞したことであり、これまでのリンパ浮腫患者試験の成果が評価されてと言える。 以上より、当初の計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度までに達成した、レシオメトリック電圧比*Vを利用した脂肪層空間領域Ωの正確な識別法の構築と、局所的変化を抽出可能なスパースベイズ学習(SBL)を用いた周波数差EIT(fdEIT)を提案し、健常者の起立性浮腫の実験、及び、リンパ浮腫患者試験に対して適用した。起立性浮腫は多くの浮腫疾患の基礎となることから、今後は、上記のリンパ浮腫データに対してより詳細な周波数解析とリンパ流路を考慮した解析を実施することで、応用性を向上させる。具体的には、周波数解析として、緩和時間分布(DRT)の解析を含めたナトリウム濃度やタンパク濃度に関する緩和周波数の特定を行う。また、リンパ流路を考慮した解析として、合流するリンパ節グループ等に基づいたリンパ流路とリンパうっ滞の分布について3D的に評価する。尚、信頼性の高いデータ取得に必須の高いユーザビリティを誇る3Dセンサーも並行して開発中である。
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