本研究では、地球史上において生物多様性が劇的に減少した大量絶滅事変のひとつである白亜紀末のK-Pg絶滅事変のメカニズムに焦点を当てる。とりわけ、類似した殻形態を持つアンモナイトとオウムガイ類に注目し、アンモナイトはなぜ絶滅しオウムガイは絶滅を免れたのか、という疑問について、その要因の1つとして提唱されている仮説のひとつである海洋酸性化と絶滅の選択性の関連を検証する。 本研究プロジェクト4年目となる2023年度は博物館収蔵標本・野外調査で採取した標本のCT撮影を引き続き行った。取得したCTデータの解析から撮影した化石標本のいくつかについては良好に保存されていることを確認した。本年度の前半にニューヨークのアメリカ自然史博物館からスイスのチューリッヒ大学へ研究拠点を移した。チューリッヒ大学博物館収蔵標本の観察を行い、また本研究の研究協力者であるクリスティアン・クルーク教授とディスカッションを行いながら研究を進めた。前年度に引き続きCTデータを用いた形態計測を進めた。さらに電子顕微鏡による化石標本の観察も引き続き行っている。年度の後半にはチューリッヒ大学から京都大学へと研究拠点を移した。京都大学で所属する石村豊穂教授の研究室では酸素・炭素同位体分析を行うため準備を進めている。その他の化学分析については、年度内に大陸間の研究拠点の変更が二度あったこともあり、準備ができていないため、次年度(2023年度)以降行う予定である。
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