研究実績の概要 |
本研究の目的は、住居のない人々に対する公的支援システムと地域間移動の実態を明らかにすることである。2023年度は、(1)東京都内18区の福祉事務所に対するインタビュー及びアンケート調査結果の分析、(2)無料低額宿泊所の供給量の推移に関する補足調査及び分析、(3)これらの研究成果について学会発表2件、論文投稿1件を行った。 (1)について、5月にアンケート票の回収を終え、各区の支援メニューや運用方法、保護開始件数、利用の多い施設種別と施設所在地域に関する18区の結果の集計を行った。支援システムにおいて、無料低額宿泊所への入所の占める比重が大きく、利用する施設の所在地域は東京市部や隣接県が多いことなどが明らかになった。また、住居のない者の保護開始件数については、18区の平均値や保護開始全数に占める住居なしの割合を用い、特別区部全体(23区)の推計を行った。自立支援センター等の就労自立ルートが年間2,000件程度であるのに対し、住居のない状態から保護開始となる生活保護ルートは、年間7,000件程度の規模であるという推計結果を得た。 (2)は、生活保護ルートの主要な入所先である無料低額宿泊所について、都心では空きが確保できず遠方への移動が生じるという福祉事務所の回答に鑑み、既存資料を用いて無料低額宿泊所の供給量の経年変化を分析した。無料低額宿泊所の規制強化が行われた2018年以降、東京市部では供給量に大きな変化がないのに対し、特別区部では施設数・定員ともに大幅に減少したことを明らかにした。 (3)は、これらの研究成果について、学会発表2件、論文投稿1件を行った。投稿論文は現在査読中である。
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